タイルメーカーは個人向けネット販売をどう軌道に載せたか<IT活用事例>
ネット販売促進業務の効率化製造販売業21から100人Web&SNS販売管理
2017年春号 2017.04.16
新規事業への挑戦と販売力アップ
メーカーならではの情報発信でファンを増やす
「メーカーは、問屋さんが“売ってくれる”のを待つのではなく、積極的に最終ユーザーへ働きかけるべきではないか」
この問いを重ね、市場環境の変化を捉えて事業展開をしてきたのが、岐阜県多治見市のタイル製造販売業・玉川窯業である。
水回り、建築外壁、公共施設のタイルアートなどを手掛け、近年は個人向け商品の手軽に貼れるDIY用タイル「かるかるブリック」がヒット中だ。室内のデザイン性を高めつつ猫の爪で壁についた傷をカバーできることで人気が加速した。現在は、個人向けネット販売が総売上の4割近くまで伸びている。
専務取締役の中島純二氏がホームページを開設したのは15年ほど前。建物の施主となるエンドユーザーに直接働きかけてブランド力を上げるためだった。次に、大手ネットショッピングモール「楽天」に出店し、個人へのタイル販売もスタートさせた。
検索エンジン対策やショッピングモールでの商品の見せ方など、ネットのノウハウは、県内の支援機関・ソフトピアジャパンの支援を受けて身につけたという。
当初、ネット販売は事業化に至っておらず、中島専務が通常業務の前後に時間をつくり、コツコツと登録商品を増やしページを改良し続けてきた。3年かかったが目標の売上額を達成できたのを機に、ネットビジネスを担当するWebデザイナー、業務担当者を採用。ネットショップ事業として動きだした。
会社名 | 株式会社 玉川窯業株式会社 |
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所在地 | 岐阜県多治見市笠原町4377番地 |
設立 | 1984年(創業:1957年) |
従業員数 | 30名 |
売上高 | 14億5000万円(平成27年5月期) |
事業内容 | セラミックスタイル製造 ・販売 |
URL | www.tmgw.co.jp/ |
バックヤードのITは売上の限界ラインを上げる
個人向け販売は、単価の低い商品を数多く取り扱うため、間違いなくスムーズに出荷する仕組みが求められる。
玉川窯業では、ヤフー、アマゾンを加えて3店舗となったネットモールでの販売データを統合管理するシステムを導入。さらに宅配便のデータセッティング、出力から顧客への連絡までを任せられる仕組みを活用している。
「事業の効率化が図れて小ロット対応ができました。バックヤードでのITの導入は、売上の限界ラインを上げてくれる。つまり売上に直接貢献するといえます」
常務取締役の中島且貴氏はこのように解説する。ただ、大手ネットモールを使うだけでは「本当のファンづくり、社内の工夫による利益率の向上が図りにくい。これからは自社のネットショップに力を入れていく」との方針を立てている。
同社には、顧客から寄せられた写真付きのメールが300件近く保存されている。「顧客の声」を紹介したり、製造工程や利用例を動画なども使って楽しく具体的に発信し、顧客とのつながりを強化していく。「作っている人だけが知っている魅力を伝えることで、商品の価値も高められる」(中島常務)からだ。
顧客とのつながりは製造部門にも良い影響をもたらした。「自分たちが作ったものを売り、お客様に喜んでいただくとモチベーションも上がります」と中島専務は笑顔で話す。
並行してオーダーメイドタイルの製造など、さらに新しい事業にも挑戦していくとのことだ。「常に次の商品をつくり、売り方も変えていく」チャレンジ精神は、商品の品質とともに同社の強みそのものである。
支援現場レポート
公益財団法人ソフトピアジャパン(岐阜県) 「IT 経営応援隊ぎふ」
事業のサイト:http://ouentai.softopia.or.jp/
玉川窯業のネット活用を支援したのは、地元岐阜県のソフトピアジャパン・経営支援室である。室長の茂木邦基氏自らがコンサルタントとして県内企業を多数支援している。
ソフトピアジャパンでは、「IT 経営応援隊ぎふ」の名称によるコンサルティングやIT 経営アドバイザーの派遣に加え、2014 年より、ネットによる販路拡大・海外展開支援を目的とした「ぎふネットショップ総合支援センター」を開設。
現在、大垣の同センターのほか、東濃地区にブランチを設置。セミナー開催、商品写真撮影、Web デザイン等の指導を行っている。
支援の特徴は「鮮度の高い情報提供と成果を出す実践的サポート」にある。
2016 年12 月14 日に東濃ブランチにて「多治見本町オリベストリート」の店舗運営者を対象に開催された「Jimdo を活用したWeb サイトのSEO 勉強会」を取材した。
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「皆さんが想定したキーワードが、実際にどの程度検索されているか、他のキーワードと比較してみてください」
講師を務める茂木氏の呼びかけで、参加者が「Google Trend」を使ってキーワードの動向を調べる。
「あれ? 少ない…」─店舗運営者が当たり前に使っている言葉が、一般ユーザーには馴染みがない、つまり検索されないことがわかり、ため息も聞こえてきた。
この勉強会では、参加者それぞれがJimdo でWeb サイトを作りサイトへのアドバイスを受けながら、ページ内にどのようなキーワードを織り込むかを実践で学ぶ。ワークの後半では、「使うべきキーワードはこれだ!」と、次のアクションが見出されていた。
当日は、ソフトピアジャパンから2 名と多治見商工会議所から1 名の指導者がスタンバイし、ツールの使い方を個別にサポートするという充実ぶりだった。
「結果を出すための指導」が県内各地でアクティブに進められている。