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【連載】IT時代の新・人材像「IT担当」360度(第2回)

IT時代の新・人材像「IT担当」360度

2014.07.05


経営に役立つIT利活用の推進へ、情報システム(IT担当)の役割は大きい。しかし「新しい職種」であるがゆえ、まだまだその役割は認識されているとは言い難い。
本連載では、情報システムの内製化を行い、戦略的IT活用を進めている佐賀県の物流サービス業・鳥栖倉庫の情報システム部門の長である副島憲一氏に、情報システム担当者の役割について語っていただく(編集部)。

鳥栖倉庫株式会社 営業企画部 次長 兼 情報課 課長
副島 憲一

中小企業にとって理想の情報システムとは?

鳥栖倉庫では、食料品、衣類、日用雑貨、化学工業品等、大小様々なロットの商品をお預かりしています。それぞれの荷主の事業規模や取引形態、求められる品質レベルは一様でなく、すべてに対応するには、個別の細かい仕組み作りが必要です。

物流の仕事は生産者と消費者をつなぐためになくてはならないものですが、物流経費は企業にとっての負担が大きく、コスト削減の対象として真っ先に採りあげられます。物流業者に求められる条件は年々厳しくなるばかりです。特に昨年暮れ頃からは労働力不足や燃料費高騰等の社会情勢の変化が顕著で、影響を最小限に止める対応策が急務です。

システム導入で得られる利益

当社の基幹システムは情報部門のメンバー6名で内製しています。内製化のメリットとしてよく言われるのが、開発コストの削減でしょう。しかしながら当社の規模で6名もの人間を開発専門に従事させることは、やり方次第では逆にコスト高になりかねません。
ですが、冒頭に書いたように、企業ごとに異なるシステムが求められ、短い期間に機能の追加や改善を行うには、内製化の体制が不可欠です。

例えば、当社には約300名のパートタイマーが在籍していますが、このパートタイマー一名当たりの作業時間を1日10分短縮できれば、300×10分=3000分(50時間)の節約が可能です。仮に開発者がこの改善に50時間使ったとしても、そのコストはわずか1日で取り戻すことができ、それ以降毎日50時間分のコストを利益に転じることができます。

現場のアイディアに素早く対応

外製の場合も同じ考え方が成り立ちますが、期待した効果が出なかった場合に試行錯誤を繰り返すのが容易ではありません。十分な打ち合わせを行ったつもりが、ほんのわずかな仕様の漏れにより、システムが予定通り稼働せず、業務内容をシステムに無理矢理合わせるようになっては本末転倒です。

特に、当社のような低い利益率での運営を強いられる中小企業は、そのわずかなシステムのずれを許してはいけません。システムはやはり業務内容に合わせるべきです。

そして、現場から改善のアイディアが生まれるよう、試行錯誤を行うための余裕を残しておきます。

情報部門の担当者はついつい理論で現場を動かそうと考えがちですが、現場の意見に素直に耳を傾け改善につなげることが重要だと考えています。

内製かどうかは別として、数年ごとのシステム更新時期まで使いにくいシステムを我慢して利用するのは、みすみす利益を捨てているようなものと言えます。

小さなアイディアにも素早く柔軟に対応することこそが、中小企業ならではのシステム作りではないでしょうか。

そのメリットを当社では精一杯生かしているところです。

 

鳥栖倉庫のIT経営については、
COMPASS 2013年夏号をご覧ください。

 

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