【連載】IT時代の新・人材像「IT担当」360度(第4回)
2015.05.13
経営に役立つIT利活用の推進へ、情報システム(IT担当)の役割は大きい。しかし「新しい職種」であるがゆえ、まだまだその役割は認識されているとは言い難い。
本連載では、情報システムの内製化を行い、戦略的IT活用を進めている佐賀県の物流サービス業・鳥栖倉庫の情報システム部門の長である副島憲一氏に、情報システム担当者の役割について語っていただく(編集部)。
鳥栖倉庫株式会社 営業企画部 次長 兼 情報課 課長
副島 憲一
お金をかけずに効果を上げるために、身近なソフトをまず使おう
「ITシステムにはお金がかかる」。その言葉の裏には、その金額が妥当かどうか判断できない、かけた金額ほど効果が感じられない等、様々な思いが隠れているのではないでしょうか。
システムは仕組みが複雑であればあるほど価格が高くなることは明らかですが、それ以上に独自性が強いということが価格を上げる一番の要因だといえるでしょう。
例えば、定番のエクセルやワードといったオフィスソフト。その開発費用は膨大ですが、全世界にシェアを持つことで個人でも買える価格帯で提供されています。
他にも、財務会計や販売管理等、多くの企業で共通に使われることを前提に比較的安価な価格で提供されているソフトウェアは数多くあります。ただし、これらのソフトウェアは安価な反面、融通が利かないため、ユーザーはソフトが持つシナリオ通りの業務を強いられます。場合によっては業務を見直すきっかけになるかもしれませんが、それができない場合は、カスタマイズ料として本体価格以上の費用が必要となる場合もあります。
判断力を高めるためにシステムを気軽に作る
このようにシステムに独自性を持たせようとすると、価格は高くなりがちですし、それが適正かどうか迷うところです。では、それを判断する能力を磨くにはどうすればよいか。キーワードは、「システムを気軽に作ってみる」です。当社は現在、完全自社開発により社内システムを運用していますが、その第一歩は、約20年前の表計算ソフト「ロータス1・2・3」のマクロ機能でした。当時の基幹システムは大型の汎用機で開発には多大な費用がかかるため、安易な開発はできません。しかも、操作をする人間も限られていて、主な業務を除く日々の細かい事務作業とは無縁でした。
しかし、表計算ソフトを使うことで、気軽に誰でもがシステムを作ることができたのです。何気ない作業手順をマクロとして実行する、ただそれだけで感動できました。試行錯誤はもちろんですが、失敗しても何度も試せる、その気軽さも大きかったと思います。それと同時にプロが作るシステムがどれだけ複雑で、時間がかかるものなのか、よく理解できました。
その後、パソコンの進化とともにAccessというデータベースソフトと出会い、素人ながらにその機能をフル活用しながら、基幹システムを構築できるまでになりました。
ITシステムは専門家だけが作るものではありませんし、スマートな処理手順や、見た目に美しい必要もないと思います。大事なのは、仕事を楽にすることです。まずは、エクセルの関数やマクロ機能を使って、身近なITの効果に触れてみたらいかがでしょう。
一歩踏み出せばこれまでの面倒な作業が劇的に変化するかもしれません。そして、その経験が、システムの価値を判断する能力を養ってくれるはずです。
鳥栖倉庫のIT経営については、
COMPASS 2013年夏号をご覧ください。
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