【連載】IT時代の新・人材像「IT担当」360度(第1回)
2014.04.05
経営に役立つIT利活用の推進へ、情報システム(IT担当)の役割は大きい。しかし「新しい職種」であるがゆえ、まだまだその役割は認識されているとは言い難い。
本連載では、情報システムの内製化を行い、戦略的IT活用を進めている佐賀県の物流サービス業・鳥栖倉庫の情報システム部門の長である副島憲一氏に、情報システム担当者の役割について語っていただく(編集部)。
鳥栖倉庫株式会社 営業企画部 次長 兼 情報課 課長
副島 憲一
情報システム担当は何に対するプロフェッショナルなのか
鳥栖倉庫は、倉庫業から物流総合サービス業へと事業を拡張してきた企業です。小さな利益を積み重ねる事業にとってITは欠かせない存在です。業務部情報課には私を含め6名が所属。在庫管理、入出庫管理、輸配送管理など物流に関わるシステムの開発と運用が主な業務です。
私自身は19年前に入社。ほどなく総務課から情報課へと異動になりました。学生時代に情報理論を学びましたが、具体的なITの手法に関してはまったくの素人でした。
単なる窓口? パソコン便利屋さん?
一般的に情報システム担当者の仕事は、ある程度パソコンに詳しい人が、主にITベンダーへの相談や発注の窓口役を担うことだと捉えられているのではないでしょうか。
しかしそのためか、社内での評価は不安定。「肝心な部分は専門家頼み」「パソコンには詳しい人」等の厳しい見方や「とにかくITのことはわからないのでお任せ」「パソコンの便利屋さん」等、好意的な見方も。いずれも特徴を捉えた見方だと思います。
しかし、システム担当者として、この程度に思われていては面白くありません。決して単なる「窓口係」ではないのです。また、企業側もパソコンの知識に明るいからという理由だけでシステム担当者を任命するのは考えものです。時に会社の経営を左右するほどの役割を担う人材なのですから。
業務に精通するプロとして
そもそも、情報システムを利用する目的は何でしょうか。
目に見えるのはエクセルやワードを使った事務作業、メールでの連絡、会計ソフトでの経理処理などですが、本来の目的は、業務の効率化による売上向上とコスト削減です。
であるならば、情報システム担当者は、その最前線にて大いに采配を振るうべき存在なのです。
したがって、求められる力は、業務内容を誰よりも深く、より具体的に理解すること。少々極端ですが、パソコンの知識などなくても構わないくらいです。
まずは、自社のサービスや製品がどのように提供されているのか、現場にはどんな問題があり、何に困っているのかを十分把握すること。そして、その問題を解決するために情報システムがどう活用できるかを考える。それが、情報システム担当者の真の役割です。
したがって、漠然とした問題意識のままITベンダーに勧められたシステムを導入することは避けたいものです。ITベンダーはシステム開発のプロであっても、それぞれの業務のプロではないのです。
最新だからとか、有名だからではなく、自社業務を知るプロとして身の丈にあったシステムを考える―これこそが情報システム担当者の仕事だと考えています。
鳥栖倉庫のIT経営については、
COMPASS 2013年夏号をご覧ください。
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