【連載】IT時代の新・人材像「IT担当」360度(第5回)
2015.06.15
経営に役立つIT利活用の推進へ、情報システム担当(IT担当)の役割は大きい。しかし「新しい職種」であるがゆえ、まだまだその役割は認識されているとは言い難い。
本連載では、情報システムの内製化を行い、戦略的IT活用を進めている佐賀県の物流サービス業・鳥栖倉庫の情報システム部門の長である副島憲一氏に、情報システム担当者の役割について5回にわたり語っていただいた。今回が最終回となる。(編集部)
鳥栖倉庫株式会社 営業企画部 次長 兼 情報課 課長
副島 憲一
新しい技術に等身大で対応、システム担当者は利益の源泉
送った荷物がきちんと相手に届いたか、注文した商品がいつ頃届きそうか、それらの情報をインターネットで調べる方法が定着してきました。この仕組みは、荷物に貼ったバーコードを各中継ポイントで読み取ることで実現されています。大手路線業者の場合、乗務員一人ひとりに読取用の専用端末が与えられ、集荷や配達の度に読み取られた情報が本部へ送られます。
荷物追跡の仕組みが普及すると、当社のような中小の物流業者に対しても同様の仕組みが求められるようになりました。
荷物追跡システムへの挑戦と失敗
ちょうど十年ほど前、当社も手作りの荷物追跡システムに挑戦しました。
当社には「動脈便」と呼ぶ共同配送のネットワークがありますが、自社の車は少なく、そのほとんどを協力会社に頼っています。そのため配達車両一台ずつに読取用の端末を配ることは、費用を含め現実的に不可能です。
そこで、各協力会社に1台だけ端末を置き、荷物の発着時にそれぞれ読み取ってもらう方法としました。情報の送信手段には既設のインターネット回線を利用させてもらうなど、極力費用も抑えるよう、工夫しました。
大手のような精緻な結果は望まず、最低限の機能を満たそうというコンセプトでした。
しかし、この試みは見事に失敗。端末の数が足りずに読み取り漏れが多発。読取時間もまちまちとなり、一日遅れで情報が送信されるなど、追跡の体を成しません。手製のシステムは間もなく暗礁に乗り上げ、数年は進展なく過ぎました。
新しいインフラを工夫して使う
それからしばらく経ち、再び対応に向けた協議を始めたころ、携帯電話の利用を思い立ちました。携帯電話はすでに一人1台と言われるほど普及しているので、簡単なWeb画面を用意し、そこにアクセスして記録してもらえば、多数の端末を配布する必要もなく、即時性も期待できます。
操作方法や通信費用の負担など懸念事項はありましたが、まずはやってみようと、協力会社を巻き込み運用を始めました。
Web画面を携帯用とパソコン用に分け、時には事務所での入力も許容するなどし、どうにか運用を続けています。百を望まなければ、やれることは案外あるものです。
これまで、5回にわたり中小企業のシステム担当者としての経験を紹介してきました。最初からビッグシステムを望まず、すでにある物を最大限活用することこそ重要だというのが実感です。本質を捉えていれば、低予算でも十分役立つ仕組みを構築できます。
システム担当者は企業にとって大きな利益の源泉です。我々には会社を変える力があります。誇りを持って業務に邁進しましょう。
長い間、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。何かの一助になれば幸いです。
鳥栖倉庫のIT経営については、
COMPASS 2013年夏号をご覧ください。
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