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【連載】防災をテーマにしたIT活用と地域活動(第2回)

大規模災害時のIT環境

2015.12.11


地域活性化や安全なまちづくりの実現は、そこに住む人々の意識や主体的な活動が大切である。静岡県森町では、防災ネットの協議会活動を通じて、顔が見える地域活動が進んでいる。同活動のメンバーであり、IT活用のアドバイザーでもあるITコーディネータの和田喜充氏に森町防災ネット協議会の活動を数回にわたり連載していただく。(編集部)

大規模災害に町のIT環境は対応できるのか、という問いかけ

2011年4月、森町を見下ろす城趾の公園で、数名の有志が空き缶と天ぷら油で作ったコンロを使って炊いたご飯を食べながら、ちょっと変わった花見の会を催していた。

集まったのは地域ブログでの情報発信がきっかけで出会い、地元の活性化を願って町づくり活動などに積極的に取り組む仲間。これまでは、「町の賑わいを取り戻すには?」と知恵を出し合う場面が多かったが、その日はこの1ヶ月で感じた不安を語り合っていた。

3月11日に東日本を襲った大震災の被害状況が日々様々な形で伝えられてくる中で、自分たちがもし被災したらその時自分たちで何ができるだろう?今から準備しておけることはあるだろうか?と。

震災時は、携帯電話の通話が断絶した状況下で、とっさに使ったツイッターでの現場からの情報伝達が有効であった事例などを耳にしていた。その反面で、デマや不確かな情報が混乱を招く原因になっていたことも報じられていた。

森町のとうもろこし

顔を合わせての勉強会だけでなく、研究会で習得したSNSやクラウドを駆使して請願書類を作成

そこでメンバーは「森町防災ネット研究会」と名付けた会を発足し、毎月1回のペースで集まり、被災時や防災のために有効なITツールの利活用について検証・調査を始めることとなった。

議論したのは、SNSやスマホなどの普及度や利用実態、そしてどのようなツールが災害時に役立ちそうかなど。多様化し変化を続けるIT環境に住民一人ひとりが目を向け、多くの人が利用しやすい災害情報発信のあり方も検討した。

併行して、森町の現況に目を向けた。当時の森町の公式ホームページは決して頼りになるものではなかった。町では全戸に同報無線の受信機が設置されているが、その運用が果たして有事に役立ってくれるのか?という心配の声も上がった。

有志の懇願から官民一体の取り組みへ

研究会では半年後、次のような請願を議会に提出することとした。

請願名『災害時における情報伝達多重化を促進するためのIT活用に関する請願』

  1. 同報無線の内容等を森町公式サイトに同時に掲載する
  2. 同報無線の内容等をメール、ツイッター、ブログ等を利用して、インターネット上に配信する
  3. 災害情報の住民への迅速な伝達
  4. 防災及び災害時におけるIT活用を推進するための協議会を設置する

この請願は、2011年の12月議会定例会において採択され、役場職員、町議会議員、消防や病院の担当者も加わり、官民一体となって災害時のIT活用について話し合う協議会が2012年3月に誕生することとなった。

請願に掲げられた2項目である公式ホームページの改修と、同報無線のサイトへの同時掲載、さらに情報を受信・拡散しやすいRSS形式での配信システムが導入されることとなった。

小さな町が、官民協力して安全・安心を確保するために動き始めた大きな一歩である。

執筆:ジョイプランツ代表 和田喜充氏(ITコーディネータ)

※1 請願とは…国民に認められた憲法上の権利の一つで、国または地方公共団体の機関に対して意見や希望を述べること
※2 森町
※3 森町防災ネット協議会

 

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