獺祭の社長が語る 逆境こそ改革のチャンス
付加価値アップ・商品開発企業間連携製造業21から100人EDI・取引先との情報連携
2014年 秋号 2016.03.04
旭酒造株式会社
代表取締役社長 桜井 博志氏
著書に『逆境経営』(ダイヤモンド社)
欲しくてもなかなか手に入らない大人気の純米大吟醸酒「獺祭(だっさい)」。「山口県岩国の四番手」だった酒蔵は、どう危機に立ち向かい、ニューヨーク、パリなど海外への進出を果たすまでになったのか。
桜井博志社長へのインタビュー第2回目である。(第1回記事はこちら)
逆境こそ改革のチャンスである
──年間を通して安定的に提供できる酒造りの仕組みが「獺祭」を生み出したそうですね。
桜井 伝統的な蔵元は杜氏に依存し、大手企業は最新の巨大な装置で酒をつくります。私たちは、「酒造りの素人」であることを逆手に取り、質を保てる製法を考えました。
仕込みは3,000リットルと5,000リットル単位で小型化しています。このサイズだとタンクの上、中、下の様子が把握できるので、安定した品質を保つことができるのです。また、米は手作業で洗いますが、水分含有量を0.1%の単位で管理しています。
──それぞれの持ち場で正確な仕事をしていくのですね。従業員の方々の表情が生き生きしていたのが印象的でした。
桜井 初めはお客様が来られてもうつむいていましたが、見学に来ていただくことで、いつの間にかそうなった感じです。
──東京への進出を意識された理由は何ですか。
桜井 「獺祭」は東京のプライベートブランドのつもりで作りました。従来のブランドではどうしても地元・山口県内第四位のイメージがあるからです。東京の居酒屋さんに置いていただき、口コミで広がってきました。
ただ、ある程度伸びると今度は卸問屋が扱いを制限するようになり、考えた末に契約を終了したこともありました。
──それは思い切った決断ですね。
桜井 このままでは生き残れないと思ったからです。お客様の評価は耳に入るようになっていましたので、日本酒を広めるには流通にも改革が必要と判断しました。
──改革といえば、原料米「山田錦」の安定的な調達へ、IT活用にも踏み込まれましたね。
桜井 2014年4月から山田錦を生産する農家に生産管理のクラウドサービスとセンサーシステムを導入し、栽培情報の収集を行ってきました。データをもとに、農家に栽培ノウハウを提供し、より一層の増産を目指していきます。
──逆境に陥っても戦い続けられる原動力は何ですか。
桜井 追い込まれたときこそ、慣習にとらわれない判断ができるものです。ただ、そこにはブレない「思い」が必要です。私たちは、お客様の「ああ、美味しい!」という声をいただくために、走り続けています。
会社概要
社名 | 旭酒造株式会社 |
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所在地 | 山口県岩国市周東町獺越2167-4 |
事業内容 | 日本酒「獺祭」製造販売 |
創立 | 1948年 |
従業員数 | 100名 |
URL | http://www.asahishuzo.ne.jp/ |