店舗拡大へ―店長育成と経営意識高めるPOSレジ<IT活用事例>
ノウハウ共有経営の見える化飲食業21から100人POSレジ・注文受付
2016年 夏号 2016.10.05
独自のスープカレーを国内外に広める
「味+人」の強みを伸ばすタブレットレジ活用
野菜のうまみが凝縮されたスープはまろやかさの途中から心地よい辛みが─札幌の食文化として全国に知られるスープカレーを探求し、新しい味を切り拓いたのがSAMA(会社名:ハイブリッジ・ジャパン)である。
会社名 | 株式会社 ハイブリッジ・ジャパン |
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所在地 | 北海道札幌市中央区北一条西15丁目大通ハイム712 |
設立 | 1999年 |
従業員数 | 直営店 15名 FC店含め95名 |
事業内容 | スープカレー店「SAMA」の運営 |
URL | http://www.hb-sama.com/ |
味には自信をもって開店 しかし足りないものが…
「カレーが大好きで、札幌中のスープカレーを食べ歩いた」という高橋秀一社長が、会社の新事業として2004年に開店した。
「当時はブームで大行列の店もありましたから、自分が考えるカレーなら当たるはず、とひらめいたのです」
しかし、オープンから2年は軌道に乗らず、「赤字の蓄積で追い詰められ、地獄だった」という。
味への評価は得られた一方、スタッフの対応や店舗演出などに手が回らず、リピートされる飲食店になるレベルまで評価を得られなかったのだ。
変化し始めたのは「すべて社長である自分の責任だと気づいてから」。高橋社長は次のように打ち明ける。
「立地も飲食業の経験がないことも関係ない。自分のこの仕事に対する思いが弱かった。社長が変われば会社が変わる。自分の行動を変えました」
「人」の育成に力を注ぎ、従業員が自立心を持ち自ら成長することをサポート。夢を語り家族のように過ごした。当時のスタッフは、フランチャイズ店のオーナー店長になるまで成長し、今や経営を語り合う間柄である。
「味+人」で魅力を高め、北海道のみならず、国内、そして香港へと店舗を拡大。2016年10月には多くのファンの声に応え東京・下北沢に出店する予定だ。
「こんな感じ」を行動できる数値にする
現在、SAMAの店舗では、タブレットのレジが使われている。
ITコーディネータ・田坂和大氏のアドバイスで4年前に導入を決めた、クラウド型のPOSレジサービスを利用しているのだ(「ユビレジ」)。
SAMAの場合、一つのカレーでもスープが複数あり、またトッピングをどうするかなど顧客の注文が多様に枝分かれするが、レジにて注文内容の詳細をすべてデータとして記録できる。
レジの操作は、画面に表示される注文内容を順にタッチしていくだけ。レシートは、カウンター下に置かれたレシートプリンターから出力する(インターネット接続はWi -Fiを経由する)。
以前は一般的なメカレジを使っており、高橋社長が現場を見ていれば顧客の動向はおおよそ掴めていた。むしろ、「データを取ったところで売上は上がらないのでは?」と否定的だったという。
しかし、今後、店舗を増やすには数字で把握できる仕組みが必要であり、田坂氏のアドバイスを受けながら「データをもとに動ければ、プラスの武器が持てる」と考えるに至った。
データ活用が習慣化 店舗増に欠かせない基盤
SAMAでは、店長間で「LINE」のグループをつくり、売上合計額の共有をしているが、今は、さらにどの店舗で何食売れたのか、具体的な数値に落とし込んで掴んでいる。月ごとの企画メニュー「マンスリーメニュー」の反応も確認しやすくなった。
「今や、詳細データを見るのは当たり前になり、店長の意識が変化しました。他店の売上を知って刺激を受けるなどの相乗効果も出ています。札幌内なら“義理人情”で売上を上げられるとしても、他の地域はそれぞれ事情が異なります。動向を分析して内容を見直すなど、手が打てるようになりました」と高橋社長は笑顔で話す。
店舗数は当時の6店から12店に増加しており、拡大を支える基盤となっている。
今後の目標は、30店舗+協力店200店舗(SAMAカレーをメニューとして提供する飲食店)の実現だ。同時に、企業理念である「食を通じて世の中で活躍できる人を育てる」べく力を注ぎ、人材輩出の場としても地域に貢献していくとのことである。
サポーター紹介
有限会社 B・Pサポート
代表取締役 田坂和大氏
(ITコーディネータ)
北海道で活動するITと経営の専門家。食品関連、建設業、サービス業等での支援実績が豊富だ。
基幹システムなど大掛かりなシステム導入から、クラウドのような新しいITの活用支援まで、経営課題に応じたコンサルティングを行っている。
SAMAへは北海道で実施されたクラウド活用をサポートする支援事業にて訪問。実は当初、高橋社長はクラウドPOSレジの必要性を感じていなかったという。しかし、田坂氏から「伸びている企業は顧客分析をしており、店舗を増やすビジョンがあるなら必要」との話を聞くにつれ、考えが変わった。
「田坂さんは否定せず、優しく話を聞いてくださるので、徐々に理解が深まり、3 回目ではっきりと必要性がわかりました。会社が前に進むには、いろいろな方に教えていただくことが大切ですね」と高橋社長は振り返る。
田坂氏は、「この仕組みをさらなる店舗拡大に活かしていただければと思います。今後は教育にもITが活用できるでしょう」と話している。