「働き方改革」は中小企業に関係ない?
2016年 秋号 2017.01.04
「仕事は会社でするもの」「長く会社にいる=頑張っている」という「常識」が変わり始めている。
しかし、「所詮他人事。うちはそういう会社・職種ではないから」と素通りしていないだろうか。
最近は政府主導での「働き方改革」推進も活発になり、長時間労働の是正や多様な勤務形態の実現がうたわれている。在宅勤務(テレワーク)の推進には厚生労働省から「職場意識改善助成金(テレワークコース)」が実施されており(2016年12月1日で終了)、育児や介護などに直面した従業員が勤務を継続できるサポートも進みつつある。
「もはや昔とは違うんだな」との感覚は多くの経営者が抱いているはず。ただ、自社で実行するとなると躊躇するし、「自宅勤務なんて、ちゃんと仕事をしているかどうかわからず、管理が複雑になる。費用をかけて社員をわがままにするだけなのではないか」といった懸念など、もう一つ腑に落ちないというのが本音ではなかろうか。
ムードとしての働き方改革、押し付けられ感のある働き方改革であれば、取り入れる必要はない。
しかし、「関係ない」という前に、メリットがあるとすれば何か、は一度考えておきたい。
COMPASSでは、3つのステップを想定している。
究極の働き方改革は、未来の課題を解決する
①オフィスにとらわれないことで効率アップ
場所にとらわれない業務の遂行は、まず売上拡大やコスト削減など、直接的な経営課題への解決策として普及した。「顧客からの問合せや要望にすぐに応えられる」といった顧客対応力、「直行直帰の実現による交通費や労働時間の削減」などの効率化を促すもので
ある。
②雇用を守り事業を継続
最近注目されるのが、様々な従業員の事情に配慮し、業務を円滑に進めるためのモバイルワークである。「子どもが熱を出して早退しなければならない」「親の介護があって週4日しか出社できない」など常時・長時間は会社にいられないが、時間のやりくりをして家などで仕事の続きができるというようなケースだ。
人口減で人材採用が難しくなってくるなか、経験豊富な社員が退職せずに勤務を続けられるのはありがたいし、従業員から見た会社
の価値も高まるはずだ。
③発想を豊かにし、時代の変化を乗り越えるために
改善プロセスを支える働き方改革に加え、もう一つ、考えておきたいことがある。
急速なITの進化、さらにAIなど人間の知的活動も代替される時代が間近に迫り、今後、猛スピードで進むであろう事業衰退と創出、人の役割・職務の変化にどう対応していくか。それを見据えた働き方改革である。
「テクノロジーが猛烈に進化している今、企業は『人』の原点に立ち返るべきと考えています。働き方改革の前に、働く意識の改革。人が生き生きと自立的に仕事に取り組める風土を醸成できる会社こそが、成長できるといえます」
社内での様々な取り組み経験から、アウトドアでの業務体験やワークスタイル変革のコンサルティングを行っているスノーピークビジネスソリューションズの村瀬亮社長はこう提言する。
普段と違う道を歩いたり、自分とは違う意見を聞いたりすることで、新しい発想が生まれたり、問題解決の方法が見つかった経験はないだろうか。意識的にオフィスの形とは異なる働き方をすることで、人材育成や風土を醸成を行い、働き手の人間力やビジネス能力をアップできると気づいた経営者も多くある。
強いリーダーが方向を定め、割り振られた職務を従業員が粛々と実行する。かつては効率的だった組織の在り方が、今後もベストな方法とはいえないだろう。
言われたことを確実にこなす人材・組織から、テクノロジーを使いこなし事業を創出できる人材・風土へ─5年後、10年後の会社のあり方を想定した創造的な職場づくりこそが、真の「働き方改革」なのかもしれない。
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*本記事は2016年11月時点での情報をもとにしています。