FinTechで変わる「お金の借り方」
2016年秋号 2016.12.13
最近よく耳にする「FinTech」。
「金融の世界のことだから、普通の企業には関係がない」ということはなく、
企業経営にも影響を及ぼし始めている。
とくに注目したいのは「お金の借り方」に多様性が出てくること。
金融とITに詳しいITコーディネータの江上広行氏に解説をお願いした。(編集部)
最新用語解説 FinTech フィンテック
FinTechとは、金融(F inance)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせて、それまでにない新しい価値をもつサービスを生み出そうというムーブメントのことをいいます。
これまでの金融サービスも、ITを駆使して構築されてきているわけですが、特にFinTechという言葉が使われるときには次のような意味合いがこめられています。
・ 既存の金融機関やカード会社ではなく、新興のITベンチャーやネット企業が価値創造の中核を担っているということ
・ いままでの金融サービスの改善や効率化の文脈ではなく、未開拓の革新的サービスで潜在的な需要を掘り起こそうという色合いが強いこと
ひとくくりで、FinTechといっても、取り組みの領域はさまざまにあります。例をあげると
・ 複数の金融機関の口座情報を統合管理するしくみ(PFM)
・ スマホ決済などの電子マネーの新しい活用
・ 「人工知能」によるビッグデータ解析を活用した融資のしくみ
・ ビットコインなどの仮想通貨の活用
・ 顔認証や指紋認証だけで資金決済をするしくみ
等々です。
お金の借り方がどう変わるか
一例として、FinTechがもたらす企業経営への影響として「お金の借り方が変わる」ということについて触れてみましょう。
これまで、お金を借りる相手は銀行で、そのときの審査は提出する決算書や担保の査定額が主流でした。
ところが今日では規制緩和によって、銀行を介さずに、貸し手と借り手を直接市場から募りマッチングさせるプラットフォーム型のサービスが存在しています。日本ではmaneo、SBIソーシャルレンディング、AQUSHなどがサービスを提供しています。
審査に用いられる情報も、決算書や担保に限定しない多様化が進んでいます。たとえば、ECサイトでの口コミ情報や販売・納品の実績、受注や在庫などの商流情報を審査してスピーディーに貸出を行うしくみが普及しはじめています。その裏側にはクラウドによる情報の連携・共有、人工知能によるビッグデータ解析の技術等が駆使されています。
日本では、楽天スーパービジネスローン、AmazonレンディングなどのECサイトでの貸出サービスが先行して登場しているほか、一般の銀行でも商流情報(EDI情報)と連携した貸出システムを構築する動きがあります。
経営者にとっては、資金調達を多様な方法で、かつスピーディーに行える可能性が広がっていくことになるでしょう。