AI(人工知能)とは―知っておきたい最新用語解説
2017年春号 2017.02.16
「いよいよAIの時代がきた」と言われ、家電や自動車がますます便利になると期待される一方、人の仕事を奪うとの懸念もある。
これからの社会に大きな影響を与えるAIとは、そもそも何を指し、企業にどのよう影響を与えるのか。
知っておきたい最新用語・AI(人工知能)について、
『初めてのWatson─ API の用例と実践プログラミング』の著者である井上研一氏に解説していただいた(編集部)。
解説:井上研一氏 アルティザンエッジ合同会社 代表社員・CEO (ITコーディネータ)
AIとはArtificial Intelligenceの略で、日本語では「人工知能」といいます。
AIは以前から研究が進められており、現在は第3次AIブームといわれています。その真相は、判断のルールを人が提示していた段階から、データを大量に投入してコンピュータが自ら法則性などのルールを「学習」し、以後はそのルールに基づいて何らかの判断をする方法への進化です。この「機械学習」が、今ブームになっているのです。
例えば、画像に何が写っているか(トラかライオンかなど)を認識できるAIがあります。機械学習の手法の一つでディープラーニングという人間の頭脳の仕組みを真似た技術を用いた画像認識では、既に人間の認識能力を超えています。
日本語や英語など自然言語の認識もAIの一分野です。コールセンターなどへの問い合わせ内容を分類したデータを機械学習させることで、質問の意図をAIで認識し、適した回答を自動で行うような仕組みも実現しつつあります。
「認識」以外に、回帰分析など統計学の考え方を用いた「予測」もAIの範疇とされることがあります。
AIが、社会の何を変えていくのか―自動化と自立化
AIの活用によって向上する利便性を2つ挙げます。
まずは「自動化」です。今までもITは様々な分野を自動化しましたが、人間が目で見て耳で聞かないと、何が起きたか判断できない「認識」の分野は残されていました。これがAIによる認識で代替できる可能性が出てきています。
防犯カメラの映像は警備員さんが見れば異常を発見できますが、AIが代替して24時間の見守りが可能になるかもしれません。先ほど例に挙げた問い合わせへの自動回答も自動化の一例でしょう。
さらに「自律化」が考えられます。機械の故障予測では、それまでの履歴データを分析して周期性を見つけ出します。さらに異常な振動や異音などをセンサーで認識することで、予測精度を上げることも考えられます。そうした予測から、実際に故障する前に自動で対応できれば、故障を回避することができます。
AIは、様々な産業の中に少しずつ導入され、今までは実現できなかったレベルの自動化・自律化が進んでいくでしょう。
その際、AIの精度が企業の競争力になることが考えられます。機械学習に用いるデータの質と量、そしてノウハウの蓄積が精度を左右します。
AIを自社の製品やサービスに取り込むことは、簡単というレベルには来ていませんが、AIを用いた認識はクラウドサービスでも提供され始めていますから、試すことは簡単です。独自のデータを用いた機械学習を使うこともできます。
まずはAIで何ができるかを体感した上で、具体的にどう適用できるか社内でブレインストーミングしてみると良いのではないでしょうか。
<井上研一氏 著書紹介>
AIを体感したい方へ
『初めてのWatson─ API の用例と実践プログラミング』
リックテレコム刊
AI による自動化・自律化で、どんなことができそうか? 使いやすいツールの一つである「Watson」を活用してAI の世界を体感するための、わかりやすい指南書。