自社に合ったIoTの活用方法とは?―小規模製造業の社長はこう考えた
生産管理・工程管理製造業20人以下IoT・位置情報生産管理・原価管理
2018年 夏号 2018.08.10
ICカードによる作業時間把握へ 小さく始めて使いながら改良を
福井県IoT/施策活用事例─坂井市 長田工業所
「IRON PLANET」─工場設備の改修工事を手掛ける長田工業所(福井県坂井市)は、子供たちが楽しみながら鉄の溶接を体験できる特設ゾーンを工場内に持つ。
「溶接に親しんでもらう活動を通じて若い人の入社を増やしたい」と話す小林輝之社長は、社内の仕組みも一人の職人が受け持つ形から、受注・図面化・段取りを行う間接部門と製造部門が役割分担する方式に変革してきた。
会社概要 | 株式会社長田工業所 |
住所 | 福井県坂井市春江町西長田41-1-1 |
設立 | 1991年 |
従業員数 | 社員数 12名 |
事業内容 | プラント設備構造物・建築金物加工 |
URL | http://osadaindustry.web.fc2.com/ |
県内で開催されたセミナーに足を運んだのは2017年夏。顧客管理をテーマにしたセミナーだったが、会場にてITコーディネータ横屋俊一氏による個別相談を受け、別の優先課題が見えてきた。
横屋氏は、「お話を聞いてみると、他にも課題があり、その一つが工場の生産実態の把握による生産効率の向上でした。IoTが使える分野でもあり、こちらから取り組むことをお勧めしたのです」と当時の様子を振り返る。
長田工業所の業務は受注ごとに仕事内容が異なるため、見積に時間がかかる。月末に締めてみないと見積と作業時間の差異もわからず、標準的な作業時間の数値が必要だったのだ。
そこで福井県のプロジェクトチーム派遣事業を活用し、まずは横屋氏が同社を訪問。作業記録をIoTで自動化するシステムを計画し、福井県の補助金を活用して構築に歩を進めた。
作業前後を自動記録 クラウドデータベースへ
システム構築を担当したのは、ロクシオの上坂哲教氏である。実は派遣事業の際は別のITベンダーから提案を受けていた。小林社長はその理由を次のように話す。
「小さく始めて改善しながらシステムを作っていきたかった。他の会社からの提案は形が決まっており、価格も高いと感じたのです」
使いながらより良いものにする─実は上坂氏自身が、こうしたシステム開発を志向していたのだという。
「契約書通りに作って終わりではなく、使う方の顔を見ながら作りたかった。今回、作業時間をどう記録するかについてカメラやICカード、タブレットなど各種方法と使い勝手を試してもらいました。また、集まったデータの集計表示方法なども意見を聞いて改良しています」
現在は溶接や塗装など主要6工程について、開始と終了時にICカードをかざし、クラウド型データベースシステムにデータを蓄積・活用する方式にトライしている。
小林社長はこれまでの取り組みを次のように振り返った。
「システムに慣れるまでは手間がかかりますが、データを見て時間意識を持ってもらえるようになればと思います。取り組みの最初に問題の抽出と優先順位付けができたのは大きく、補助金によって踏み込むきっかけをいただくことができました」
このIoTシステムは始まったばかり。これから長田工業所とともに成長していく。