【IT導入補助金活用例―鹿児島県 焼酎店】 IT導入に踏み切れた理由とは?
2018年 秋号 2018.08.29
目利きで信頼集める焼酎店は なぜIT導入に踏み切れたのか
鹿児島県いちき串木野市 林酒店
壁いっぱいに並ぶのは蔵元を歩き「本当に惚れた」焼酎。鹿児島県いちき串木野市の林酒店には、地元はもちろん全国各地から焼酎好きが足を運ぶ。顧客を包み込む優しい口調で飲み方や用途などを聞きながら焼酎選びのアドバイスをしているのが、三代目店主の林奈津代氏である。
会社概要 | 林酒店 |
住所 | 鹿児島県いちき串木野市西浜町143 |
従業員数 | 3名 |
事業内容 | 鹿児島焼酎を中心とした酒類の販売 |
URL | http://www.0996-32-2059.com/ |
守り続けた手作業の管理 ITの利点もわかるが…
地元の商工会議所とITの専門家が背中を押す!
多様な蔵元から少量ずつ仕入れる同社の取扱い商品数は1000に及ぶ。在庫や販売の管理に加え、酒税支払用の報告も定期的に行わねばならない。
「蔵元別台帳は紙。4カ月に1度の酒税報告用の販売実績整理は夜な夜な手書きでした。二代目である母の苦労を共有したいとの思いもありました」
林氏はこのように話す。年末の棚卸は大仕事だったという。
実は、販売管理システムの提案は頻繁に受けていた。「入れたら楽だろうと思いつつ、費用も気になっているうちに8年経っていました」と林氏は振り返る。
機会を捉えて背中を押したのが、いちき串木野商工会議所の立山英樹氏である。日頃から会員企業とコンタクトを深め林酒店のシステム導入への迷いも耳にしていたところ、2017年2月から経済産業省のIT導入補助金が実施されることを知る。
早速、IT導入補助金相談会を企画し、鹿児島県よろず支援拠点の向江隆行氏に相談対応を依頼、林氏に参加を呼び掛けた。
林酒店の業務の流れを把握した向江氏は、地元のITベンダー・日本システムの酒店用販売管理システム・POSレジ「拍酒喝采」が補助金に対応していることを掴み、林氏と相談の上、IT導入補助金の申請支援を行った。結果、無事採択を受けた。
売上と在庫が連動 顧客へのサービス強化も
システム導入時に難関だったのは1000に及ぶ商品をシステムに登録する作業だった。
「登録が終わって便利になった状態をイメージし、夢を描いてやり切りました」と林氏は当時の様子を話す。IT導入補助金の事業期間が定められていることが、逆に支えになったという。
2017年7月から新システムが無事稼働。入庫した商品を登録し、販売時はバーコードで読み込む。売上記録と同時に在庫が引き落とされ、データとモノの流れが一致した。単品管理は顧客向けサービスにもなっているという。
「レシートに商品名が印字されますので、お客様側の購入記録として活用いただけます。また、ご来店中に入荷した商品をその場で登録し販売できるので喜んでいただいています」
ねん出できた時間は蔵元や顧客との関係強化やサービス強化に投下し、「次の代につなげられる経営をしていきたい」と林氏は意気込みを語った。