【寄稿】どこまで進んだか? ドローンを使ったスズメバチの巣駆除(IoT活用)
2019年 冬号 2018.11.20
本誌2017年夏号に寄稿いただいたドローンによるスズメバチの巣、撃退システム。その後も改良が重ねられ、要請を受けての実働が進んでいる。この1年間の進捗状況を桜井氏に寄稿いただいた。
また、この取り組みは、「MCPC award 2018」奨励賞を受賞した。(編集部)
【寄稿】ドローンによるスズメバチの巣駆除法の確立に向けて 静岡での取り組み
執筆:株式会社Queen Bee And Drone 取締役 桜井俊秀氏
前回の寄稿記事をきっかけに、実際にスズメバチの駆除依頼がありました。
携帯電話の通信設備を請け負う大手企業からで、対象は伊豆半島にある、塗装工事を控えた電波塔の巣(スズメバチはすでに生息していない状態)でした。その時点では機材が開発途上だったため、共同実験にて実施。今後、全国にある他の電波塔でも起こりうることを想定し、依頼主も立ち会い、作業経過を見届けました。
鉄骨の間から噴射するので困難を極めましたが、無事成功しました。
その様子を他のドローンで撮影し映像を確認したところ課題も多く見出され、更なる対策と技術改良を続けました。
噴射パイプの改良さらに続く依頼
次は、地元・静岡県の養蜂会社からの情報で、郊外の住宅の軒下に古い巣があるとのこと。新たに開発した、アルミパイプを「竹槍」の形にして巣に突き刺すという方式の実験を行い、これもまだ改善の余地はあるものの、突き刺し噴射自体は成功しました。
巣の状況に合わせた様々なパイプのバリエーションがポイントです。考案と実験を重ねている最中、山口県の秋吉台国定公園にあ
る「秋芳洞」入口、絶壁の地上20mの場所の巨大なスズメバチの巣の駆除依頼が入りました。
地元の駆除業者には高所作業になるため断られ、観光シーズンを控え何とかしてもらえないかという悲痛な声でした。
初日の閉園後と、翌日は早朝から開園までの限られた時間で、合計5回。初期の目的を果たすことができました。その翌週には、静
岡市内山間地での駆除依頼もいただきました。
昨今、在来型の「スズメバチ」とは異なる種の「ツマアカスズメバチ」が、広くアジア地域に生息範囲を拡大し深刻な被害を与えています。このハチは、農作物の受粉をするなど大きな貢献を果たしているミツバチを食い殺すたいへん獰猛な種です。すでに宮崎県に上陸したとの最新情報もありますが、高い樹木の先端や断崖絶壁など高所に巣をつくるため、駆除専門家にとっても作業の危険性が高く、対策に苦慮していました。
ドローンを利用した空中での薬剤噴霧を実現することで、労災事故を伴う高所作業を排除し、安全性を維持しながら駆除効果を得られます。
今後は、「ドローンでスズメバチを撃退」のビジネスモデルを、駆除業者、あるいは養蜂業者の方々とのフランチャイズ契約により、全国に展開するための営業体制を構築する段階に移行予定です。
http://queenbee-and-drone.com/