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働き方改革関連法、対応できてますか―勤怠管理のIT化で起きた変化とは?

2019年 夏号 2019.06.19


2019年4月から働き方改革関連法が順次施行され、年次有給休暇の取得義務化や時間外労働の上限規制、労働時間の適正把握の義務化等々への対応が必然となった。

紙や表計算ソフトで出退勤管理、休暇申請・承認などを行っている場合は業務負荷がますます重くなるし、手作業ゆえのミスも起こりやすい。この機に、IT活用で“紙の電子化”と“作業の自動化”を図ってみてはどうだろう。
そして、勤怠管理システムの利用には、省力化以上の効果もある。

オービックビジネスコンサルタント(OBC)の「奉行Edge 勤怠管理クラウド」を活用して成果を挙げている企業として、愛知県一宮市の住宅建設業・エコ建築考房の事例を紹介する。

 

愛知県・建設業 エコ建築考房の
 健康に暮らせる家づくりで売上も社員数も大幅増

一宮市にあるエコ建築考房の本社兼ショールームは、100 %無垢の国産木材、壁や断熱材も自然素材だけを使って建てられている。名古屋市と春日井市のハウジングセンターに展示しているモデルハウスも、もちろん同社が受注して建てた家も同様のコンセプトで、木の香りと温もりが満ち溢れている。

「ベニヤ、合板、ビニールクロスといった新建材は、接着剤や化学薬品が人体に影響を及ぼす危険があるため絶対に使いません」と、2代目社長の喜多茂樹氏は話す。そもそもは義父である髙間利雄氏(現・取締役顧問)が1998年、『人が笑顔で健康に暮らせる家をつくりたい』という強い想いで創業した。

同社が設計・施工する家の価格帯は、一般の工務店が建てる家の平均単価よりも上になるが、そのコンセプトに共感するファン=顧客は着実に増えている。

会社概要 株式会社エコ建築考房
住所 本社:愛知県一宮市九品町4-22
事業内容 注文住宅およびリフォームの設計・施工
設立 1998年
資本金 1000万円
URL https://ecoken.co.jp/

 

大手住宅メーカーに交じってハウジングセンターに出展したことも認知度向上や付加価値の訴求に効果をもたらした。また、「定期的に開催している住宅見学会もファンの増加に結びついています」と、総務部広報・企画グループの堀江省吾氏は言う。

売上は右肩上がりで伸び、それに伴って社員数も飛躍的に増えた。喜多社長は、「正社員の業務軽減や多様な働き方、考え方が増えるようにパート社員を積極的に採用したことが人員増の一番の要因です」と説明する。人数は40名規模に増えた。

 

働き方の大改革を決断、労務管理の仕組みも整備

地域で存在感を示せるほどに企業は成長したが、労務管理の仕組みは旧態依然のままだった。

「勤怠の管理には無頓着でしたし、残業は当たり前という風潮もありました」と、喜多社長は振り返る。若手社員が増えても、長年の企業風土は変わらなかった。

しかし、喜多社長は「このままではいけない」と思った。社員の本音を探ろうとアンケートを行ったところ、労働時間や勤怠管理に関する不満も顕在化した。そこで、「社員のため、またコンプライアンスの側面からも改革を行うべき」と決意し、「ECO WORK2020」と銘打ったプロジェクトを発足。まずは2017年、20時退社・木曜日17時退社を制度化。そして2018年には社員の労働状況を正確に把握すべく、勤怠管理のシステム化に取り組んだ。

導入システムは、税務や労務の支援を依頼しているコンサルティング会社の勧めでOBCの「奉行Edge 勤怠管理クラウド」に決めた。
2018年のIT導入補助金を利用してコスト負担も軽減できた。

2018年7月から社員数名で試験運用を開始。同年10月から本格稼働させた。

 

 

全員がシステム化を評価、労働時間への意識も向上

出退勤の打刻、直行直帰や休日出勤、有給休暇あるいは打刻漏れの申請・承認などは、以前から各社員に支給しているiPhoneで行えるようにした。利用現場では、打刻操作はすんなり受け入れられた。勤怠管理システムには、各種申請手続きなど、法令に沿った標準的な業務フローが盛り込まれているのもメリットだ。

同社では未体験のこともあり、各種の申請・承認作業の習慣化には時間をかけて取り組んでいる。

「特に打刻漏れで事務作業が発生することもまだある」(堀江氏)という。労務管理を担当する総務・経理の藤安直子氏は、「きちんと打刻や申請をしていないと、勤務時間の集計時に打刻漏れや休日出勤の未申請によるエラーが出るので、わからないときもありました」と吐露する。そうした際には、すぐにOBCのサポートセンターに連絡しアドバイスを受けた。「パソコン画面を共有して遠隔から作業を支援してくれるので非常にありがたかった」という。

新たな環境への戸惑いはあったものの、「運用開始後のアンケートで、社員全員が『導入してよかった』、半数は『仕事が改善された』と回答しました。また、有給休暇や休日出勤の振替休暇も取りやすくなったとの評価もありました」と堀江氏は説明する。

藤安氏は、「残業超過など勤怠に関するアラートが届くので、労働時間に対する意識が高まったように感じています」と言う。

喜多社長も「いい家づくりに加えて、“いい会社づくり”も皆でやっていこうと旗を振った甲斐があった」と、確かな手応えをつかんでいる。今後は休暇取得や残業時間に関する規定厳守、フレックスタイムや週休2日制の導入検討なども進めていく考えだ。