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「鯖の街・小浜」復活へ養殖に取り組む-―IoTで海水状況を把握し、ノウハウ蓄積

2019年 夏号 2019.06.25


鯖の養殖のノウハウをIoTとタブレットシステムで
     -福井県 小浜市 産業部農林水産課

「小浜の鯖を復活させたい」─かつては大漁だった鯖の漁獲量が激減し、漁業を畳む人が増えた福井県小浜市では、市が主導して、鯖の養殖に取り組んでいる。目指すは鯖をキーワードにした地方創生である。

小浜市の呼びかけに賛同し、養殖への挑戦を決意した漁師・浜家直澄氏、福井県立大学等の専門家とともに、2016年から養殖をスタートした。

養殖では水温と餌の量の関係性が高いといわれているが、経験や勘に頼りがちだ。
小浜市ではノウハウを蓄積すべく、浜家氏が日々の天候や餌の量を記録した用紙をFAXし、市でデータ入力をしていた。しかし、タイムラグが発生し、また手書きしたものを入力する作業の手間もかかる。

そこでKDDI社の協力を得て2018年に取り組んだのが、IoTを使った水温等の自動測定・記録だった。

 

水温等を1時間おきに送信 餌の記録と共にデータ蓄積

IoTシステムは、いけすの枠の上にソーラーパネルを設置した通信装置を置き、ここにつながるセンサーを海水に入れるものだ。1時間おきに自動的に水温、塩分濃度、酸素濃度を計測してサーバーに送信する。

当日の餌の量は、専用のタブレットシステムから浜家氏が記録。「IT機器は苦手でタブレットなど使えない」と尻込みしていた浜家氏だったが、現場のいけす配置に合わせてデザインされた入力画面は使いやすく、今では船から降りるとすぐにタブレットに入力しているという。

データの蓄積により、水温に応じた最適な給餌が見えてきた。今後は、脂ののった鯖とさっぱりした鯖を餌のやり方で分けることも可能になるという。

さらにデータをAIで分析し、鯖養殖のマニュアル化を進めたいとのこと。「漁業の後継者を育てていきたい」と浜家氏は決意を語る。

地元で養殖された鯖を出す飲食店との連携もできており、「鯖の街・小浜」復活が着々と進んでいる。

 

この取り組みは「MCPC award 2018」にて特別賞を受賞しました。