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田んぼの水管理にIoT 限られた人手で大きな収穫を

2019年秋号 2019.10.03


農業で進むIT活用。このうち、水管理におけるIoT、ドローンによる農薬散布など、積極的な活用に取り組む静岡県袋井市の事例を紹介!

 

「高齢化に伴い、近隣農家からの作業委託が増え、耕作面積が拡大しています」
静岡県袋井市の米作り農家・古川農園の古川伸一郎氏は、Uターンで、実家の農業を継いだ。

古川伸一郎氏

タブレットを開き、見せてくれたのは田んぼの水管理状況だ。
 
2年前、静岡県の農地局から、農林水産省の事業「水田水管理ICT活用コンソーシアム」プロジェクトへ参加の打診を受け、水管理へのIoT活用を進めてきた。

その大きな理由は、現在25haと増えた水田を同じ人数でカバーするための効率化である。 

特に、米作りの肝となる水管理は、栽培暦に従い成育段階に応じた調整が必要な大事な仕事だ。
「遠くの水田の様子を見に行き、水門を開け、また閉めに行くだけでも時間を要します」と古川氏は言う。

 

 

IoTセンサーで水管理遠隔操作や自動給水

今回トライアルしたのは、IoTセンサーを用いて水田の水温や水量をデータ管理し、給水操作を遠隔のスマートフォンやパソコンから行うものだ。

パイプラインが通っている田んぼには、水田センサーおよび給水弁を設置。状況を見て、給水弁を遠隔から開閉する。パイプラインがきていない地
域は、水門を開けて、U字溝の用水路へ水を流す必要がある。

こうした場所に現在3か所、笑農和が開発したIoT自動水門「paditch gate」を設置。遠隔操作または設定した水位により自動で給水が可能となった。

* 写真のタブレットで操作しているアプリケーションは、生研支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち経営体強化プロジェクト)」の支援を受けて開発したものです

 

管理時間の削減へ ドローンの活用にも取り組む

現地を往復する時間が削減され、実証実験の目標である「管理時間の2分の1削減」を実現できる見込みという。
「水管理作業で削減された時間は、他の仕事に回せるようになりました」 
古川氏は成果をこう話す。 

さらに、ドローンの活用も進めている。飛行許可証をとり、静岡県に計画を提出。ドローンを使って水稲の粒状除草剤等の散布を実施。ヘリコプターほど大掛かりではないものの、1回・約10分の飛行で100a 程度の防除・粒材散布が可能だという。

IoTのソリューションを活用した農業の業務改革は、生産性の向上とともに、後継者不足を食い止める魅力的な職場づくりにも寄与しそうだ。