「キャッシュレス決済2020」 国際標準規格に対応せずにして東京五輪の「おもてなし」はない
2020年冬号加筆 2019.11.26
カードをかざすだけで改札を通過できる「Suica」を代表とする交通ICカードは、使い方の容易さ、スピードが受け、店舗での電子マネー利用も進んでいる。電子マネーとして、「Edy」や「nanaco」といったショッピング用電子マネーも提供されている。
「日本は電子マネーの先進国」と胸を張りたいところだが…。海外の動きに目を向けると、事情はあっという間に変わっていた。
海外で広がる「非接触型カード決済」―かざすクレジットカード決済
オーストラリアシドニーの地下鉄では、クレジットカードをかざすだけで入場できる。お店での買い物も、金額を確認してかざすだけ。手持ち現金が少なくても、両替前の旅行者でも、スイスイとモノやサービスを買える。
見た目はこれまでのクレジットカードと同じだが、日本の「Suica」のようにかざして決済できるクレジットカードなのだ。
世界中で利用されているクレジットカード/デビットカードは偽造防止チップなどセキュリティを高めてIC化され、暗証番号を入力する形に。さらにかざす決済=非接触型にも対応したのである。
下記の無線のマークが、世界中で共通規格として使われている。
非接触型IC方式による「かざす決済」は、Visaでは「Visaのタッチ決済」、マスターカードでは「Mastercard コンタクトレス」と呼んでいる。
国際標準規格であるため、指定マークのある世界中の加盟店にて対応端末にカードをかざすだけで決済ができる。この簡便さが人気の要因だ。英国、フランスなど欧州、オーストラリア、シンガポール、台湾、米国と普及が加速中。台湾ではクレジットカードの対面取引のうち約半数が非接触型の「かざす決済」だという。
さらに、冒頭で挙げたシドニーのように、電車の改札において、交通用の専用カードを使わなくともいつものカードをかざすことで入場・出場できる都市が増加中なのである。
編集部スタッフが海外旅行時に利用してみたところ、便利さは抜群だった。現地通貨を使いきってしまった帰国直前の空港にて、急に絆創膏が必要になったが、クレジットカードをかざして約200円の決済にて商品を手に取ることができた。
訪日外国人が慣れた決済方法を
一定額を超えるものは暗証番号を求められるが、少額決済はクレジットカード/デビットカードをかざしてサッと済ませる――これが世界のトレンドなのである。そして、「かざす決済」に慣れた外国人が、対応カードを持って続々と日本を訪問している。
2020年は東京オリンピック・パラリンピックが開催され、対応は急務だ。それがわかっているのに使えないところばかりでは、「おもてなし」は名ばかりと言われてもしかたない。
しかしなぜ、同じようにかざすのに、日本と海外ではシステムが異なるのか。