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顧客本位の新しいコインランドリーを、スマホアプリとIoTで

オリジナル 2020.02.12


MCPC award 2019 モバイル中小企業賞受賞
次世代コインランドリー「スマートランドリー」とは

 

洗剤は使わずアルカリイオン水で汚れを落とす――。千葉県浦安市のwash-plusが考案したコインランドリーが、直営店舗で高評価を受け業界に広がりを見せている。

さらに同社は、店舗内のランドリー機器をIoT化することで、利用者がスマホアプリで洗濯乾燥機の予約や進捗状況確認、キャッシュレス決済などを行え、事業者側も遠隔から機器の制御や状態監視、売上管理など効率的な運営を実現できるシステム「Smart Laundry」を開発。自社だけでなく他事業者でも導入が進み、右肩上がりで利用者を伸ばしている。

wash-plusのコインランドリー店

 

“洗剤不使用”掲げ事業開始 利用者目線で利便性を追求

wash-plusの設立は2013年。地元不動産会社の2代目社長である高梨健太郎氏が立ち上げた。

wash-plus 代表取締役 高梨健太郎氏

 

同氏は、「2011年3月の東日本大震災による液状化被害で不動産業の売上が激減したため、他の事業で収益を確保しようと考えました」と創業の背景を説明。さらに「手持ちの不動産を遊ばさないための投資目的ではなく、あくまでビジネスとして本腰を入れ、他にない付加価値を追求しようと考えました」と言う。

それが、従来の常識を覆す洗剤不使用の仕組みだった。このアイデアに賛同したランドリー機器メーカーの山本製作所(広島県尾道市)と共同で製品開発し、2013年6月に直営店「wash+」1号店を浦安市内にオープン。口コミで人気が広がり、確かな手応えを掴んだ。

2号店以降では、来店者向けの割引サービス、店舗内へのキッズコーナーや貸しロッカーの併設など、ユーザーニーズを的確に捉えた利便性向上策を次々に展開した。

 → 高梨社長に聞く コインランドリーに革新を起こせた理由

 

 

wash-plusのホームページより

 

会社概要 株式会社wash-plus
住所 千葉県浦安市猫実1-9-5
設立 2013年
従業員数 2名
事業内容 コインランドリー事業、コインランドリーシステムの企画・開発
URL http://www.wash-plus.co.jp/

 

3社連携で機器・システムを完成 盗難・覗き見の防止機能も提供

「Smart Laundry」の開発に着手したのは2016年2月。スマホアプリを使ったキャッシュレス決済を実現すべく山本製作所に話を持ちかけ、そこからコインランドリーの運営側にも利用者側にも付加価値をもたらす多様な機能を盛り込んでいくことになった。システム開発は同じ浦安市にオフィスを置くソフトウェアハウスで既知の関係にあったパークに依頼した。

システムの概要は、店舗内に設置した超小型サーバーを介して洗濯乾燥機とデータ保管場所のクラウド及び外部の決済サービスを連携させている。

 

 

コインランドリー利用者は、スマホアプリで洗濯乾燥機の空き状況確認、利用予約、進行状況確認、乾燥時間延長指示などが行える。スマホに終了通知も届くので、合い間の時間(30~60分)を有効に使える。

 

「SmartLaundry」アプリ画面のイメージ(画像提供 wash-plus)

 

洗濯物の盗難防止やプライバシー保護に役立つな洗濯乾燥機のドアロックや窓ブラインドといった利用者目線のユニークな機能、法人ユーザーに有効な自動領収書発行機能も提供している。決済機能については、Amazonpay、クレジット、携帯キャリアなど多様な方式に対応している。また、インバウンド需要や将来の海外展開も意識してスマホアプリは多言語(日英中韓)対応にした。

 

顧客囲い込みに有効な 特典提供機能を拡充

wash-plus取締役の加藤雅史氏は、「Smart Laundryは当社店舗で独占的に使っているわけではありません。他のコインランドリー事業者も山本製作所製のSmart Laundy対応洗濯乾燥機と超小型サーバを組み合わせることで導入・運用が可能です」と話す。

 

wash-plus 取締役 加藤雅史氏

 

導入事業者は、利用者向けの各機能について設定変更やカスタマイズを自由に行える。さらに次のようなオーナー向け機能も利用できる。

・利用時ポイントを付与し、獲得ポイントに応じて特典を提供できる「ステイタス機能」

・割引などの「電子チケット発行」が可能(発行方法は、店内のQRコード読み取り、チラシなどに記載したコード番号入力、登録会員などへの一斉配布の3種類)

・有料会員や法人顧客などをグループ登録(最大3グループ)して割引利用料を設定できる「グループ機能」

これらの機能をうまく活用すれば、リピート率向上や顧客囲い込みを図ることができる。また、加藤氏は、「直営店舗では、ステイタス機能で付与するポイント数を、洗濯終了後3分以内に洗濯物を取り出した場合は2倍にする設定にしたことで、洗濯物の放置時間が明らかに短くなっています」と話す。

また、グループ機能は、法人オーナーが福利厚生や取引先向けの特典――例えば、商業施設などで敷地内にコインランドリーを開設する際、従業員や仕入れ業者であれば割引料金で利用できるようにするといった活用方法が増えているという。

 

導入効果に確かな手応え 他業種への応用も視界に

Smart Laundryの導入は2017年11月に開店した「wash+ 稲毛海岸店」を皮切りに、2020年1月時点で直営店舗19店舗(千葉県15、東京3、北海道1)、他事業者も含めると総計80数店舗に達する。

スマホアプリのダウンロード数も2万人、さらに週500人ペースで増えている。

直営店舗での実績としては、現段階ではスマホアプリの利用者は全体の2割程度だが、洗濯後の放置時間短縮、10時前後に集中する利用者の分散による稼働率向上などの効果が実際の数値で確認できている。しかも「売上も全体で4割くらいアップしています」と高梨氏は語る。

今後はシステムのさらなる機能向上、利便性向上を積極的に進める考え。2020年2月からは自社ブランドのフランチャイズ展開も開始しており、2022年までに導入実績400店舗を目指す。

そして高梨氏は、「Smart Laundryの仕組みを他業種にも応用できないかと考えています」と、その先のビジネスにも照準を定めている。

 

2019年11月28日 MCPC award 2019 表彰式にて

*「Smart Laundry」はMCPC award 2019において、モバイル中小企業賞ならびに、普及促進委員会賞を受賞しました。

*本サービス開発の背景について、高梨社長へのインタビューはこちらへ。