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サービスの質を高め、働く人の利便性にも寄与する情報共有とは

2020年秋号 2021.02.19


その人らしさを皆が大切に
地域に溶け込み共生する介護
 ―広島県福山市 鞆の浦・さくらホーム(有限会社親和)

街と一体化し、自宅のようにくつろげる場所(写真提供 さくらホーム)

 

瀬戸内海の景勝地の一つである広島県福山市の鞆の浦は、「歴史そのまま」の風情ある街並みが広がり、映画やドラマの舞台にもなっている。住民の約半数は高齢者だが、街のシンボル・常夜灯近くではベンチで懇談する元気な高齢者の姿が見られた。

鞆の浦に4拠点を構え介護・障がい者支援サービス等を展開するのが鞆の浦・さくらホーム(社名:親和 以下、さくらホーム)である。

2003年に創業した羽田冨美江社長は、高齢者を施設に閉じ込めない、「地域のなかでの介護」「地域共生の街づくり」を目指した。

その思いは少しずつ地域で受け入れられ、街の人々はごく自然に要介護者を見守り、介護スタッフは地域に溶け込んでいる。

 

会社概要 有限会社親和
住所 広島県福山市鞆町鞆552番地
創業 2003年
従業員数 約70人
事業内容 介護サービス(グループホー
ム、デイサービス、小規模多機能サービ
ス、居宅介護支援事業)、障がい者支援
サービス、宿泊業
URL http ://www.tomo.sakurahome.net/

 

利用者の人生を理解 その分、情報量は増大

介護サービスの提供に際し、さくらホームが大切にしているのは「その人らしさ」である。

 経営陣の一人、羽田知世氏は次のように説明する。
「趣味や昔されていたことなど、その方の人生を皆で理解して、より良いかかわり方を探しています」

羽田知世氏(右)と石川裕子氏(左)

 

そのため、さくらホームでは、通常のケアマニュアル以上の情報を共有している。

「スタッフも多様な働き方をしていますので、誰が訪問しても記録を見て適切な対応ができるよう心がけています。現場の地域の方から聞いたお話なども大切にしています」
主任ケアマネージャーの石川裕子氏は現場の様子をこう話す。

しかし、小規模多機能ホーム事業だけでも、月にのべ1300回の訪問がある。情報量が増えるにつれ、共有方法が悩みとなった。

Excelのファイルをクラウドで共有していたが、運用は限界に近づいていた。介護向けのITツールを探すも、目的に沿うものが見つからない…。単純な効率化ではなく、サービスの質向上を効率的に行う情報共有システムが欲しかったからだ。

 

築300年の商家を改装した鞆の浦・さくらホーム

 

一緒に成長するシステムで効率的な情報共有を

そんな時、携帯電話ショップの紹介で出会ったのが、自身も介護事業を手掛けるNORTHHAND GROUPだった。

同社の「N-SYSTEM」(クラウド型)をカスタマイズして2019年に導入。同年のIT導入補助金にも採択された。情報の活用は、15台のタブレットで行っている。利用者ごとに時系列、シーン別、入手経路別の情報がすぐに探せ、写真も簡単に閲覧できる。

 

 

新しい情報はSNSのように「タイムライン」で表示されるので見やすく、日々の介護サービスに活かされている。また、介護現場ですぐに入力できるようになったことで、情報共有にかかる時間を月あたり約300時間削減できた。

IT導入補助金の申請支援を行ったITコーディネータの姫野三樹氏は、「経営理念に沿って、働き方改革を進めつつ事業拡大できる基盤が整いました」と評している。

さくらホームでは、新しくゲストハウスの運営も始めた。「地域密着は変わらないまま、働く場の創出、変化に沿った事業展開をしていきたい。次は、スタッフの増加にともない人事分野でのITツール活用を考えています」と羽田氏は抱負を語る。

街の高齢化は悲観すべきことではなく、現状を受け入れ、どう街の未来を創るかこそが大切なのである。

 

<ITツール紹介>――――――

「N-SYSTEM」(NORTH HAND GROUP)

営業部リーダー 永井宏樹氏

NORTH HAND GROUPは自身も介護事業に携わっている。「医療関係者との情報連携など、欲しい機能を持つ適正価格の介護向けITツールがなく、自社開発したのがN-SYSTEMのきっかけです」と営業部リーダーの永井宏樹氏は話す。

現場の情報を直感的な操作で記録・共有できることと、「使いこなせるまで現場サポートを行う」のが特徴だ。

さくらホームでは、「私たちが大切にしていることを理解して提案をいただき、一緒に成長できると感じました。必要な機能は追加してくださり、ありがたい」と感想を話している。

 

<サポーター紹介>――――――

ブルーインIT経営研究所
姫野三樹氏(ITコーディネータ)

 

 

IT 導入補助金の申請にあたり、NORTHHAND GROUPからサポート依頼を受け、現状分析および事業計画とITツール活用による効果の関係を分析・整理した。さくらホームの次の取り組みについてもサポート予定という。

「IT導入はシステムの入れ替えなど目先の対応になりがちですが、さくらホームさんは、仕事の進め方をパワーアップするためにITを活用しています。筋が通ったIT導入と言えます」と分析している。