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新型コロナウイルス対応病院を支えたICT―現場から我々が学ぶこと

2021年春号 2021.08.30


デジタルに着目したから乗り越えられた
日光市民病院の新型コロナウイルス患者対応に学ぶ

「オンライン○○」があふれ出した1年。ネットワークでつながることを前提に広がるデジタル化の動きをどう感じただろうか。
「中小企業にITは難しい話」「テレワークできる仕事じゃないし関係ない」と他人事にしていたら、あっという間に世の中は変わってしまう。
業界を問わず、着眼によって課題を乗り越えられるのがデジタルの良さだ。

コロナ禍の砦として我々を守ってくれている地域病院の例を紹介しよう。

病院概要 公益社団法人地域医療振興協会
日光市民病院
住所 栃木県日光市清滝安良沢町
病床 100床
場所柄、観光客の急患対応もある
URL https://www.jadecom.or.jp/jadecomhp/nikko/

 

遠隔映像通信を使った良い解決法はないか?

世界的観光地である栃木県日光市。日光東照宮にほど近い高台に建つ日光市民病院では、2020年2月から新型コロナ感染症患者を受け入れ、4床だった感染症病床を現在は8床に倍増させている。

同病院は大規模ではなく、会社でいえば中小企業にあたる。
よって医師や看護師は感染症病棟専任とはいかず、兼任で一般病棟と行き来することになる。都度、防護服を着たり脱いだりするので、きめ細かく対応しようとするほどに、感染リスクが高まってしまうのだった(脱ぐ時に一番リスクが高い)。

 

 

もし、この病院の経営者だったらどうするか。「慎重に気を付けていこう」と鼓舞するか、それとも「ケアが不十分になっても仕方がない。病床に入る回数を減らそう」と指示するだろうか。

日光市民病院は、遠隔対応システムに活路を見出した。ナースコールのような1:1の通信で互いの顔を見ながら話ができる「ペーシェントコールシステム」である(高いレベルの個人情報保護が求められるため、SNSの電話システム等は使用しない)。この取り組みは、「MCPC award 2020」においてモバイルパブリック賞を受賞した。

 

働く人を守り患者にもメリット

診療行為を、直接患者に接する場合と、検温や食事の具合など情報をやり取りする場合に分け、前者は入室、後者は遠隔対応システムを利用することにした。

防護服を着ての入室回数を減らして医療関係者を守りつつ、患者の顔色などを見ながらナースステーションできめ細かく対応し、医療の質を高めることができた。

これは患者にとってもメリットのある仕組みだった。
防護服を着ている相手を目の前にすると「長く話してはいけない」など患者も気をつかいがちだが、遠隔での会話ができるようになってからは、「『後遺症など気になることを質問しやすくなった』との感想をいただいています」と同病院の管理者・内科医師の杉田義博氏は話す。

課題に直面したとき、「働く人に無理をさせ過ぎず質を落とさない方法はないか」「今のIT技術ならできるのではないか」と発想し行動する─日光市民病院の判断とデジタルを使いこなす意思は、一般企業においても学ぶところが多い。

 

日光市民病院
管理者 内科医師
杉田義博氏