若手社員が前向きに働ける会社に──新規事業やIT活用で新たな発見も
事業継続・中期計画人材活用・採用運輸業21から100人人事・労務・メンタルヘルス
2021.12.04
働き方改革への対応に勤怠管理システムを導入した2019年当初、東京都江戸川区の運送業・彦新では、事業承継後の新しい経営体制の確立、若手の採用、IT活用など、精力的に変化を始めていた。動くことで課題が見え、視野が広がっている。
会社名 | 株式会社彦新 |
住所 | 東京都江戸川区—之江8-19-6 彦新ビル2F(市川と鹿島に営業所) |
設立 | 1953年 |
従業員数 | 41名 |
事業内容 | 一般貨物自動車運送事業、不動産業 他 |
URL | http://www.hikoshin.com/ |
若手の未来をどう描くか運送業の課題に向き合う
そして2021年秋、彦田敬輔社長の一番の関心事は、人材育成にあった。
「ドライバーが高齢化しているなか、当社は福利厚生や社員を大事にする経営で、若返りました。運転技術はもちろんですが、目標を立て、健康を維持し、前向きに能力を磨いていけるよう教育の場を設け、積極的に関わっています。ただ、運送業ならではの課題もあるのです」
ドライバーの給与は、輸送距離や時間に基づく歩合によるところが大きく、仕事を覚え体力のある30代〜40代が収入のピークと言われる。若くても高収入が得られる一方、同じ仕事に飽きがきたり、50代以降の在り方が見えにくい面がある。
せっかく入社した社員。長く勤務してもらえる会社にするために、彦田社長は、運転や健康維持などにおいて小さな目標をクリアしながら成長できる仕掛けづくり(スマホアプリの開発を視野に入れている)や、業務そのものを多様化させ、適性や能力に合わせたキャリアパスを描けるあり方を模索している。
「運送は依頼された荷を運ぶことが仕事ですが、今後は“荷を作る”、つまり自社商品を持つことがカギになるでしょう」
彦田社長はこう打ち明ける。
その動きの一つが、彦田社長の配偶者である彦田佳子氏が代表を務める「ヒコシンラボ」におけるコミュニティ創造型の新事業(コラム参照)である。従来から行っている不動産事業においても、大規模修繕を機会に「人が気軽に足を運べる場づくり」を進めるという。
IT点呼の導入で効率化、そして課題も
IT活用の面では、新たなアプリケーションを導入したことで、次の課題が見えた。
取締役の大久保正氏は次のように語る。
「遠隔で点呼とアルコールチェックがでるIT点呼システムを導入しました。従来は2拠点に2人の管理者が必要でしたが、システム導入により、管理者1名で2か所の点呼を可能とし、2分1の人員で済むようになりました。ただ、このツールと勤怠管理(「勤怠ドライバー」)が連動しないため、今のところ二重管理となっています」
点呼が終わると結果が勤怠管理に反映されればスムーズだ。
また、勤怠データを元に給与計算を行う際、現行のシステムではデータ連携ができず、「連携させたいが、個別開発すると費用が大きくなってしまう」(彦田佳子氏)のが悩みだという。
IT活用の効果をより引き出すには、アプリケーション間のデータ連携が欠かせない。IT提供側の対応を待ちたいところだが、すでにこの課題が顕在化しているところが、彦新の改革意欲の高さを示している。
解決策として、トラックに装着しているデジタルタコグラフの運用を定着させ(現在は主に走行位置の把握に利用)、得られた運行データを勤怠データにすることも考えているという。
データ連携が進みバックヤードがさらに効率化されると、同社が志向する「楽しくスキルアップしながら働ける会社」の実現が加速するだろう。
コミュニティ目線で新事業に挑戦 ヒコシンラボ
運送業の枠にとどまらず、地域や人をつなぐ新しい事業を─彦田佳子氏が代表を務める新会社がヒコシンラボである。
「大人の修学旅行」として日本百名城やゴルフ親睦会などのツアー企画、地酒を楽しむイベントの開催など、興味や持ち味を生かしたコミュニティ型の事業を展開する。
オフィスの入口はバーのようなカウンターが設置され、ツアーの相談や日本酒の購入もできる。
人とモノが動く新しい事業活動は、彦新の運送事業にも刺激となり、新たな場を生み出すことが期待される。