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「えっ、そう感じていたの?」 
ITを使うからわかった、社員の心もよう

2021.12.23


心の変化を把握し離職を減らす! 管理者も成長できるIT活用
   ―宮城県仙台市 人材派遣業 東洋ネクスト

「離職を減らし長く働いてもらえるよう、スタッフとの対話には力を入れてきました。しかし人数が増えると物理的な限界もあります…」
宮城県仙台市の東洋ネクストは人材派遣会社。「多様な働き方を先取り」するユニークな形態が事業の特徴だ。限られた時間や曜日単位の就労を希望するスタッフのシフトを組み、派遣先のニーズに応えている。

例えば毎日営業する飲食店が1名のスタッフを求めているとき、一人が30日間働くわけにはいかないが、同社では平日午前中のみ、平日を週3日、土日働けるといった様々な就労形態のスタッフを時間帯や曜日で組み合わせ、現場を回していくのだ。

派遣スタッフが評価を受けて、3年後の直接雇用につなげるのが一番の望みだという。

会社概要 東洋ネクスト株式会社
住所 宮城県仙台市青葉区一番町2-4-1 読売仙台一番町ビル10F
設立 1989年
従業員数 220名(パートアルバイト、派遣スタッフを含む)
事業内容 人材派遣業
URL http://toyonext.co.jp/

 

心のコンディションをITツールで可視化

業種にかかわらず、働き手の離職は悩みの種だ。欠員が出た現場の対応はもちろん、新たな採用、教育など時間もお金もかかるし、働く側も悩みや不満を抱えたまま退職し成長の機会を失うことになる。毎日顔を合わせるオフィス勤務以上に、店舗などの現場に分かれる業態は「辞めたい」と言われて初めて問題に気づくことも多々ある。

東洋ネクストのスタッフは定着率が高いほうだが、スタッフに適宜聞き取りを行い、情報を整理して派遣先企業にレポートしている。なぜ、手間のかかることをするのか。佐藤章央社長は次のように語る。

「スタッフがどんな一日を過ごし何に課題を抱えているか、業務面でのミスマッチはないかと聞くことが、離職抑制につながるのです」

しかし、管理者によってスタッフの言葉を受けとめる感度にばらつきがあり、また、管理者一人が100名近いスタッフを受け持つため面談機会を逃すなど、課題も生じていた。

「デジタルでスタッフの心が可視化でき、離職の理由を知って適切な対応ができたらどんなに良いかと考えていた2020年夏に『マインドウェザー』を知りました。ここからITツールを活用したマネジメントに舵を切ったのです」

「マインドウェザー」は洋服のお直し業を営むビック・ママが開発した、スタッフの「心もよう」を可視化するクラウドサービス。スタッフはLINEを通じてサービスサイトに接続し、今日の「心の天気」を回答したり、困りごとやサポートしてほしいことなどを書き込める。

MindWeatherのスタッフ側画面のイメージ

MindWeather
スタッフ側画面イメージ

 

推進担当となった営業本部マネージャーの葛岡憂輔氏は、導入に抵抗を感じていたスタッフに活用意義を説明し続けたという。

「利用が進み始めると、不満が書き込まれ内容が荒れたこともありました。その時は、これは仕事でありネットの匿名掲示板とは違うときちんと説明しました。会社が意見を受けとめ対応することが理解された数か月後からは、一定のラインを保つようになりました」

 

代表取締役社長 佐藤章央氏(写真右)
営業本部マネージャー 葛岡憂輔氏(左)

 

離職率が半減!重要な管理者のスキル

管理者は「マインドウェザー」の管理画面からスタッフ一人ひとりのコンディションを一括把握し、対応が必要な時はアナログの力をかける。
この取り組みを続け、同社の離職率は50%減少したという。

その過程で見えてきたのは、マネージャーのスキル、管理者の在り方だった。

「上がってきた声に対するレスポンスが『こんなにできていない』と気づいたのです」と佐藤社長は打ち明ける。

例えば、書き込まれた内容を見て書いた人に怒ってしまわずに、「事」に向かい合えるか。どう声をかければモチベーションが上がり笑顔で働いてもらえるのか。素早く適切なレスポンスを返せるかなど。離職の多さ=マネジメント層の弱さでもあるのだ。しかしながら、このノウハウは見過ごされがちだった。

 

東洋ネクストでは、こうした課題解決の実績をもとに「HRコンシェルジュ」の事業展開も模索している。

葛岡氏は「マインドウェザーのデータから管理者それぞれの対応力を分析すれば、より効果的な研修も提供できます」と指摘する。

「東北は30年後に人口が30%減少するといわれています。だからこそ、人事機能は大変重要です。採用・教育・定着面で地域に貢献していきたい」と、佐藤社長は力を込め、今後の展開を語った。