石垣島での挑戦──コロナ禍で初めて挑んだネット販売 使いやすさの改善はクイックに対応
2022年 春号 2022.03.07
2022年1月、コート不要の暖かさにも関わらず、沖縄県の石垣島に観光客の姿はまばらだった。休業する飲食店や棟の半分は営業を止めるホテルも…。
年明けすぐ、沖縄県に「まん延防止等重点措置」が適用された。石垣島は県内他地域に比して軽微であったが、ツアーの中止や自粛の影響が島を直撃した。
海外からも高い評価を得ている、鉱石とガラスの融合で石垣島の海の色〜石垣ブルー〜を表現した焼物「石垣焼」を製造・販売する石垣焼窯元も、例外ではなかった。個人客の来店は続いているが、ツアーでの訪問が減ってしまった。
「お客様がいらっしゃらないから…と、何もしないでいたら経営が難しくなります。これまで実施していなかったネットショップやクラウドファンディング「Makuake」に挑戦しました」
石垣焼窯元の工藤晴美氏は、自社の対応をこのように話す。
2020年11月に実施した「Makuake」の第一弾では、初日2日間で全体の7割を占める数字を出し、1週間で目標額を達成。400人を超えたサポーターからは、感想やメッセージが多数寄せられた。
その後、石垣市商工会が主導して、石垣島フェアのタグ付けを行い、島全体をMakuakeでPRできることに。請福酒造・八重泉酒造との共同プロジェクトにて、酒器と酒のセット販売も実施した。
会社名 | 合同会社石垣焼窯元 |
住所 |
沖縄県石垣市名蔵1356-71 |
当主 | 金子晴彦氏 |
設立 | 2007年(創業は1999年) |
従業員数 | 5名 |
事業内容 | 石垣焼の製造・販売(陶器、陶器アクセサリー等)、体験陶芸教室 |
URL | https://www.ishigaki-yaki.com/ |
ネット販売に初挑戦、実施してわかったことも
石垣焼は、1品ずつ色の出方や模様が異なり、本来なら手に取って選んでほしい商品である。そのためWebサイトは情報提供を主眼としネットショップは開設していなかったのだ。
コロナ禍の、初挑戦だった。
リアルに感じてもらえるよう、撮影角度やライティングに工夫をしたり、使用イメージがわかるよう料理を盛りつけた写真を撮ったり工夫をした。動画も勉強したという。
写真撮影の費用には石垣市の補助金が利用できた。
ところがオープンしたネットショップを2022年2月にリニューアル。なんとも早い改良である。
理由は「スマホ対応」にあった。
オープンしてみると、ネット購入者の7割がスマートフォンからとわかった。
当初使用したカートシステムはスマホ対応が弱く、使い勝手も改善したい点があったため、最新のECサービスを調べ「Shopify」に切り替えることにしたのだ。
クイックに変えられるのは企業文化なのだろうか。
「やってみてわかることも多いので、少しずつ動かしながら変えるようにしています。全部できているわけではありませんが、「こうしたいな」「これをやってみたいな」と常に考えるよう心がけています」と工藤氏。変化を前提とした取り組み姿勢やPDCAの大切さが伝わってくる。
活かされた! 在庫管理・顧客管理
そして、2020年までに進めてきた販売管理(POSレジ)、在庫管理、顧客管理等、一連のITツールも力を発揮した。
ホテル等のショップで委託販売されている商品の在庫状況が一元的に把握できるので、製造計画がスムーズになった。
また、クラウドファンディングやネット販売において、リピーターのありがたさを強く感じたという。手厚い対応の基盤となり、メール配信も行える顧客管理システムが導入されていたことは、大きな力になった。
「会社を維持してこられたのは、お客様のおかげです。多数の励ましもいただきました。リピーターの方にもずっと愛していただけるように、ワクワクする新しい作品も作っていきます」
工藤氏は心からの感謝をこう表現し、そして、「たくましく生きていきます!」と元気な笑顔を見せた。