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【製造業の改革】若手の力を伸ばし、そして…
 デジタル化プロジェクトの実際 

2021年秋号 2022.05.12


モノづくりの高度化をITで支える 若手の成功体験が社内を活性化
岡山県岡山市 機械製造業 フジワラテクノアート

改革への挑戦が働き手の力を伸ばす─デジタル化プロジェクトを進行中のフジワラテクノアート(岡山県岡山市)にて、「変えていく力」が醸成される様子を目の当たりにした。

同社は醸造設備等の製造にて業界トップシェアを誇る。例えば日本酒メーカーなら杜氏をどうサポートするか、内容も様々であり、オーダーメイドの個別受注生産を行っている。アフターフォローを大切にし、顧客との信頼関係を築いてきた。

本社工場

シェアの高さに安泰せず、同社はモノづくりの高度化・新しい価値提供に向けて「開発ビジョン2050」を打ち出した。行動計画における重要項目の一つがデジタル化の推進だった。
副社長の藤原加奈氏はその理由を次のように語る。
「2050年に向けた長期ビジョンを実現し社会やお客様に新たな価値を創造していくには、効率化や見える化で更に時間や利益を確保すること、そして情報やナレッジを組織で共有し若手の成長スピードを上げることが必要です」

代表取締役社長 藤原加奈氏

会社名 株式会社 フジワラテクノアート
住所

岡山県岡山市北区富吉2827-3

代表者 代表取締役 藤原恵子氏
設立 1950年(創業は1993年)
従業員数 147名
事業内容 醸造機械・食品機械の設計・製造等
URL 株式会社フジワラテクノアート (fujiwara-jp.com)

 

部署横断&若手中心の改革プロジェクト

2019年10年、各部署から若手中心にスタッフを集めて「業務インフラ刷新委員会」を発足。役員も参加し、課題の共有と適切なITツールの導入を推進している。

プロジェクトの事務局役を担ったのは、ITのスキルを持つ経営企画室の頼純英氏だ。現場の課題を聞き取り、ITで実現できることとの橋渡しを行った。
「集まった課題は100を超えました。これを図示して業務フローとともに整理し、優先順位を議論しました。取り組みの第一が生産管理システムです」

個別受注生産の特性から、担当者がExcelで管理していたが、可能な部分を標準化して効率化とデータ蓄積を進める。使い込まれてノウハウが詰まっておりバージョンアップもしやすい点から、パッケージソフトの活用を前提とした。

ITベンダー4社に提案を求め、委員会の検討を経て、機能とサイズ感のバランスからテクノアの「TECHS︲S」に決めた。2020年7月に稼働を開始し、受注︲設計︲生産プロセスの展開を統合管理できるようになった。製造に関する正確なデータが蓄積されれば、見積精度の向上にもつなげられる。

同時に、これまでFAX等紙ベースで行っていた部品仕入れ先への発注をオンライン化した(「BtoBプラットフォーム発注連携オプション」)。

実際、紙の取引を一気に電子化できるものだろうか。 委員会メンバーの一人、製造部の室井俊輔氏はこう打ち明ける。
「春先から取引先に案内し、現時点で取扱い発注書の95%が電子化されました。『嫌がられるのでは?』という懸念はむしろ依頼側の思い込みといえます。もう時代の流れですね」

部品発注の電子化に伴い、一ヶ所だけパッケージソフトをカスタマイズした。発注時に、どの機械・どこで利用するかの情報を付与し、納品物に貼付できるようにすることだ。「到着した部品が迷うことなく現場に回り、社内で選別する作業も不要になりました」と室井氏は言う。

 

時間の削減はもちろん全社最適の動きが加速

システム導入によって、製造現場は月間80時間の削減、発注の電子化で月400時間・月12万円のコスト削減を実現した。

さらに大きかったのがプロジェクトを通じたモチベーションアップだ。技術営業部の山﨑友香理氏は、「『できた』という経験は自信につながり、会社全体を見て動く意識が高まりました。今年は私たちが直接利用する営業支援システムを導入しているので、ぜひ使いこなしていきたい」と前向きな意欲を見せる。

ITの導入費用に関して「投資の何倍もの効果がある」と話す藤原副社長は、ここまでの取り組みを次のように振り返った。 「全社でIT活用を進めていくことで、個人や部署の都合を超え全社最適で考えるようになり、ビジョン実現のためのDX、ものづくりの在り方を更に高度化していくという共通イメージが持てるようになりました。引き続き改革を進めていきます」

 

働きやすい環境づくりや健康経営にも積極的に取り組む。明るい社員食堂では、顧客企業が生産した味噌や醤油、塩麹などを調味料に採用