これだけは知っておきたい!
もう始まっている改正電子帳簿保存法
2022年春号 2022.05.18
2022年1月から、改正電子帳簿保存法(改正電帳法)が施行された。
同法は帳簿や証ひょう書(請求書等)を電子的に保存する方法として、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3区分を定義しているが、デジタル化に対応した改正によって「電子のものは電子のままで」「紙の書類も電子でどうぞ」と電子を基盤にする方向に変化したのだ。
すべての企業が必ず知っておきたいのは、電子でもらった証ひょう書の取り扱いである。取引先の書類の発行形態は自社では決められないからだ。
これまでPDFなどの電子でもらった請求書をプリントして紙で保存していた企業は要注意である。
PDFで受け取った証ひょう書類は、
社内処理のためのプリントはかまわないが、
PDFのみが原本として認められる。
これらのファイルを、改ざんや削除などなく(真実性)、探しやすく(可視性)保管する義務が生じるのである。
専門家は…「自社は関係ない…」という思い込みは禁物
経営セミナーの講演において、改正電帳法を解説する機会が増えているという、アルパーコンサルティングの古川忠彦氏は、「『うちはいつも紙だし…』と言っている企業でも、ネットで備品や消耗品を買ったことがあるケースがほとんどです。そのときにダウンロードしたりメール添付されたPDFの領収書は、電子ファイルが原本となります」と指摘する。
こうした法改正は小規模企業や個人事業主には関係がなさそうに思えるが、取引書類を100%紙で受け取っている企業以外は、すべて対象になる。
法人税、所得税にかかわることであり、「知りませんでした」という言い訳はできない。
一部報道では、「2年間、猶予がある」と記載されることもあるが、猶予ではなく「宥恕」なので注意したい。「すでに施行されており、2年間は、『罪ではあるが罰則は科さない』というだけです。誤解は禁物」(古川氏)なのだ。
電子保存の業務フローを確立し、慣れておくこと、必要な規程やIT環境の整備が求められている。
◆――――――<専門家インタビュー>―――――――◆
「うちは小規模だから関係ない」─電子帳簿保存法の改正、そして2023年に迫った適格請求書(インボイス)についてセミナーでお話すると、経営者の方がよくこのようにおっしゃいます。改正電子帳簿保存法はすでに施行され対応が義務化されました。2年間罪を見逃してくれる(宥恕)だけ。
数年後、税務調査が入り大量の否認が起きたら高額な追徴課税もあり得ます。
「紙でいいじゃないか」と見ないふりをせず、この2年間で電子保存の業務フローに慣れておきましょう。
ポイントになるのは、電子で受け取った証ひょう書(領収書や請求書等)は、電子が原本になることです。会計処理業務のためプリントするのはかまいませんが、原本にはできません。原本は、「取引年月日」「取引先」「取引金額」がわかるようなファイル名をつけて保存しなければなりません。これは激震とも言える非常に大きな変更です。
モノタロウ、アマゾン、楽天などのECサイトで部材や消耗品を購入していませんか。ネットからダウンロードする領収書も、電子が原本になります。取引先から、対応を求められることもあるでしょう。
嘆いてもどうにもならない外部環境の変化ですから、まず、電子保存しなければならない量がどのくらいになるかの点検から対応を進めてください。電子データの保存は、パソコンの中よりは、クラウドのファイル保管サービスなど、帳簿保存が求められる7年間以上、安定的に利用できるものが望ましいといえます。バックアップも忘れずに。(談)
<古川忠彦氏によるポイント整理>
<関連情報>
・国税庁からの案内