顧客の不安を払拭する正直経営!「伝えること」でリピーターを増やす
付加価値アップ・商品開発販売促進・問い合わせ増・PR不動産業20人以下Web&SNS
2015年 夏号 2015.09.11
大多数の人は、おそらく一生に一度か二度であろう住宅や土地の売買。人生を大きく左右する高額な取引であるにも関わらず、「よくわからない」世界だ。「買う」ほうはまだしも「売る」ほうは特に情報が少ない。
不動産売買に関しては、最近になって「両手仲介」の問題がマスコミにも取り上げられるようになった。本来、売手と買手の双方に仲介会社が入り、互いの利益を最大限にする交渉を進めるのだが、売手側の仲介会社が専属媒介契約を結び売手を囲い込み、自社で買手を見つけて双方から仲介手数料を得るというものだ。
高い査定に喜んで仲介を依頼したものの、売れずに途中で値下げを求められることも少なくない。
「不動産業界は残念ながら皆様がご想像の通りの業界です。ここを払拭していきたい、というのが起業の思いでした」
東京のターミナル駅・池袋から三駅。三つの大学がキャンパスを構える江古田駅近くに店舗を開くハウジングサクセスの金子徳公社長は、業界の常識に顧客の視点から疑問を投げかけた。同社の店舗には、顧客からのお礼状や年賀状など、たくさんの「ありがとうの声」が寄せられている。金子社長の方針を顧客が支持・共感している証である。
ページ冒頭の写真は、代表取締役 金子 徳公氏。
独立した際には、「過去の仲間に頼った商売」を意識的に控え、新しい顧客を開拓した。経営方針が浸透するまで3年は我慢するつもりで準備したという。
<お知らせ>
金子徳公社長の著書が刊行されました!
『我が家を売る時も買う時も絶対損しない方法』(現代書林)
社名 | 株式会社ハウジングサクセス |
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所在地 | 東京都練馬区旭丘1-66-1 |
設立 | 2004年 |
従業員数 | 9名 |
事業内容 | 不動産仲介(売買、賃貸)、リフォーム等 |
URL | http://www.housing-success.co.jp/ |
目先の売り上げにとらわれず会社の信頼を得る
信頼を得るサービスの一つが売却希望物件の「3つの査定」だ。「標準価格」、できるだけ高く売るチャレンジを含めた「販売価格」、業者買い取りを依頼する場合の「買取価格」の3つを提示し、顧客が売却方針を定めやすいようサポートする。例えば、「時間がかかっても良いからできるだけ高く売りたい」なら「販売価格」を目安に売り出し価格を決める。
そして、金子社長は「目の前の成約のために駆け引きしない」ことをポリシーとする。他社物件を検討することになった顧客にも、その人にとって適切かどうかを客観的にアドバイスすることもある。
しかし、売上は会社の生命線だから、自社に誘導したくなるのが「営業」の本音ではないのか。
「後悔がない売買をお手伝いして、お客様が何かを感じ取ってくださればいいと思っています。次の機会にご相談いただいたり、お客様を紹介してくださることもあります。何もつながらないときは、自分の接客に問題があったと受けとめています」と金子社長は言う。
多額の広告費をかけられる大手不動産販売会社の営業所・支店は、顧客側に情報が少ない段階では有利だ。しかし、一度売買を体験した顧客は、仲介会社の姿勢を肌で感じ取るので、勝負の土俵がサービスの質に変化してくる。
同社はリピータや紹介、両手仲介に遭って困っている顧客などに選ばれ、顧客を増やすことができた。
ネットでは多角的に発信。情報を正確にしっかり伝える
もちろん、自社の方針を伝える努力もしている。業界では早い2005年からインターネットでの物件案内を始め、自社の考え方を正面から発信。また、問い合せを受けた顧客には丁寧なメール案内や、「マイページ」による物件情報案内などを行っている。
最近は、売却希望者が個々の不動産会社に問い合わせる前に、複数社から物件の査定情報を受けられるポータルサイトが人気だ。ハウジングサクセスが査定を行う際は、A4で4、5枚の詳細なレポートを出して査定の意味を伝えるそうだ(さらにレポートを郵送もする)。納得した顧客から、「当社より高い査定をした会社があったにもかかわらず依頼を受けることも多々ある」(金子社長)という。
ネットの専任担当者を置き、ツイッターやFacebookも含め毎日のように情報発信を行う同社だが、手紙、はがき、ノベルティなども大切にし、手段は一つではない。「時代に流されず自社に必要な手段を選び、ネットとアナログをいかに組み合わせて伝えていくかを考えています」とのことである。
ハウジングサクセスは現在、9人体制で売買、賃貸、リフォームなどに対応。将来は専門分社化しながら100億円規模を目指す。
そして、金子社長にはもう一つ、夢がある。
「小さな飲食店も経営して、当社にご縁があったお客様が気軽に立ち寄れるようにしたい。お客様同士の輪が広がるのは理屈抜きで心躍ります」
同社の姿勢に共感する顧客が増えれば「業界の常識」も変わっていくことだろう。