データと現場感できめ細かい販促を実現した婦人服店
販売管理顧客管理サービス業21から100人POSレジ・注文受付顧客管理
2015年 冬号 2015.10.20
大阪らしい、明るい色合いの洋服が陳列されている店内には、楽しく会話をしながら商品を選ぶ女性の姿が見える。年齢層は高めだ。
大阪府豊中市の千里中央駅「せんちゅうパル」に店舗を構える創業65年のベッチンヤは「55歳以上の、お洋服を楽しむ女性」をメインターゲットにした婦人服店である。
量販系の店舗が増え、事業環境は決して平穏とはいえない。そうしたなかで同社は、世界に1枚しかない手染めスカーフ、色やサイズ感を重視した商品選びなどに力を入れ顧客の支持を得ている。
三代目店長の弓場(ゆば)将氏は、「おしゃれすることで元気になる方もいらっしゃいます。昔からある商店街のお魚屋さんのように気軽に立ち寄れる店を目指しています」と店舗のコンセプトを説明する。
最近では、足が悪いなど様々な事情で店舗を訪れにくい顧客宅に商品を持って訪問する「お洋服お届けサービス」が好評である。また、顧客のズボンの丈を把握し、来店せずともぴったりの丈にして送るきめ細かいサービスも顧客の心を掴む。
ITの活用については、販売管理やDM作成など早期から着目。2008年には通販サイトを開設するなど積極的に取り入れてきた。
2012年には、豊中商工会議所IT推進室の支援を受けてパソコンPOSレジによる販売管理・顧客管理のシステム化を推進。成果も明確に表れてきている。
社名 | 株式会社ベッチンヤ |
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所在地 | 大阪府豊中市新千里東町1-3-224 |
設立 | 1972年(創業1948年) |
事業内容 | ミセス向けファッションの販売 |
URL | http://www.betchinya.com |
パソコンのトラブルがきっかけ 価格を抑えたPOS導入へ
「そもそもはDM作成中にパソコンが急に動かなくなり、困り果てて豊中商工会議所に助けを求めたのがきっかけでした」弓場店長はこう振り返る。
豊中商工会議所の「パソコントラブル出張サポート」にて訪問した専任アドバイザーの中元一廣氏は、連絡から1時間程度で到着し、素早く状況を確認して端末を預かり、1日ほどで修復して届けた。
「最初に顔を合わせたときは、なんだか怖そうで不安を感じた」と笑う弓場店長は、その後、中元氏やIT推進室の押川携課長に様々な疑問点を解決してもらったことで信頼感を持ち、「何かあればすぐ相談するようになった」という。
次に課題となったのがExcelを使っていた販売管理だった。データ量が膨大になり、限界すれすれだったのだ。そこで同会議所に相談して販売管理ソフトを導入したが、汎用的なソフトは1つの品番にサイズ・色と枝番が付されるアパレル業には向かず、入力作業が複雑化してしまった。
苦い経験ではあったが、これがシステム化への意欲を後押しした。
パソコン等でできるPOSレジシステムが低価格化してきたのを受け、導入を検討。3社のサービスを比較し、サポートの充実を決め手に同会議所が提供するクラウド対応POSシステム「BCPOS」を導入した。
3~4時間分の作業をカット 優良顧客の発見も
POSレジシステムは2012年9月から運用を開始。さらに、ポイントカードとつながる顧客管理システムも別途構築し、両システム間でのデータ連携を可能とした。
表れた第一の効果は「売上の集計作業時間の削減」だった。
以前は、値札に商品コードをスタンプで手押しし、売れたときに半分を切り離し、閉店後に台帳と照らし合わせて集計していた。毎日2人で4時間近くかかる作業だったが、入荷時に値札にバーコードを貼っておけば、販売時に読み取るだけで自動集計ができるようになった。
弓場店長は、「短縮された時間を別の業務に割り当てられるようになりました」とほほえむ。
最初の1年は商品の登録や運用の習熟に時間を取られたが、データが1年分蓄積された2014年に入ると仕入れ数量の読みが可能となり、さらに「高額・大量な買い物はしていないけれど頻繁に来てくれている方」、つまり売上に貢献度の高い顧客が明確化されてきた。
また、来店頻度や購入商品の価格帯などで顧客を分析し、DMの内容や送付のタイミングも工夫できるようになった。「しばらく来店されていないお客様に“ご様子伺い”のDMも送るようになり、そのハガキを見て足を運んでくれる方もいました」(弓場店長)という。
システムに頼りきらず顧客の顔を思い浮かべる
ただ、弓場店長は「システムの自動化に頼り切るのはよくない」と言う。例えばDMの送付対象を特定の数値条件で抽出すると、姉妹で来店する顧客の片方だけにDMが届くといったことも起こる。
「発送リストを出力して目を通し、実際にお客様のことを思い浮かべて判断しています」と打ち明ける。
今後は、POSの機能をさらに使いこなすこと、また高齢者向け施設での出張販売の際に、持参していない商品の色などをタブレットで見せる仕組みも考えているという。
ベッチンヤは素敵な服を着る喜びをたくさんのミセスに届けるため、歩みを止めずに進化していく。
支援機関紹介
豊中商工会議所
専任アドバイザー
中元一廣氏
弓場氏は、「私たちがITを選ぶ際、プリンターを1台買うにも迷います。細かいことでも気軽に聞けるのはありがたい。同じシステムを別の地域の会社が入れましたが、相談する人がいないようで私に電話がかかってきます」と話す。
ユーザー視点で具体的なアドバイスを提供できることは、会員企業にとっても会議所を活用する付加価値になっている。
豊中商工会議所
IT推進室 課長
押川携氏
本誌「支援機関のICT支援日記」でもおなじみの豊中商工会議所は、IT推進室を設置しており、IT活用による売上向上・効率化を積極的に支援している。経営指導の一環としての相談に加え、「ITコンシェルジュ」としてモバイルやセキュリテイなどのITサービス、「パソコントラブル出張サポート」などの有料サービスを事業として提供している。