【連載】防災をテーマにしたIT活用と地域活動(最終回)
2016.09.21
地域活性化や安全なまちづくりの実現は、そこに住む人々の意識や主体的な活動が大切である。静岡県森町では、防災ネットの協議会活動を通じて、顔が見える地域活動が進んでいる。同活動のメンバーであり、IT活用のアドバイザーでもあるITコーディネータの和田喜充氏に森町防災ネット協議会の活動を5回にわたり連載していただいた。今回で一区切りとなる。(編集部)
小さなことの積み上げで地域を変えていく
森町防災ネット協議会として官民一体となった防災活動は、少しずつ着実に新しい取り組みを増やしている。昨年度の活動報告をまとめて町議会に提出し、新年度はより多くの賛同を集めて町ぐるみの活動にしていきたいと方針を定めたところに衝撃が走った。
4月14日に最大震度7の『平成28年熊本地震』が発生。揺れが続き、広範囲で大きな被害をもたらす中で進められた救助や復旧作業、同時に避難所への救援物資の運搬、ボランティアによる支援などが開始される状況を、協議会メンバーも固唾を飲んで見守っていた。
信頼できる発信源から迅速で正確な情報が広げられるかどうかで、次の動きに差が生まれているように見受けられた。森町に当てはめた場合に、緊急に対応しなければいけない課題があることに気付き、協議会では『東海地震』の備えとして町に緊急提言をした。
災害時におけるICT活用についての緊急提言
- 森町公認のTwitter、Facebookアカウントでの情報発信
- 森町各地域から防災情報発信協力員による地域情報の発信
- Wi-Fiポイントの増設
- 情報発信、受信のためのスマホ・タブレット等の使い方講習の実施
町長に手渡された提言は、森町役場の若手職員で新たに構成されたICT推進委員会で検討され始めている。また、6月の協議会定例会議にはICT推進委員会の若手職員が加わった。ライブ動画放送『森町防災ネットTV』にもゲストとして登場し、自らが情報発信者となることに挑戦し森町の魅力をカメラの前で語ってくれた。
いまや全国どこでも、いつ震災やその他の大災害が発生してもおかしくないという危機感を持たねばならない。地域に関係なく一人ひとりが日頃からできることは何かを考え、万が一に備えることが大切である。
その際、新しく画期的な仕組みの開発や導入が効果をもたらすこともあるが、人任せや行政頼みではいけない。普段から、身近にあるものを活かすスキルを持つこと、そして互いの立場や役割を認識し支え合える体制を作れることがリスク回避や適切な対応につながる。
何かが起これば一時的に関心は高まるが、時が経つにつれ徐々に関心が薄れていってしまう。自分が住む町の状況に関心を持ち、日々、自分たちで安心・安全で豊かな生活を築いていく努力──小さなことでも地道に積み上げていくことが地域の未来を変えていくに違いない。
執筆:ジョイプランツ代表 和田喜充氏(ITコーディネータ)
※1 森町
※2 森町防災ネット協議会
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